明日から師走。例年この季節は街のクリスマスの飾り付けが醸し出す空気に何かと急かされているような気分になります。米国の感謝祭からクリスマスあたりまでの休暇シーズンには市場は年末の決算を控えてポジション調整取引が中心になり、そしてクールダウンしていくことが多いのですが、今年は欧州債務問題の広がりから不安定な動きが続きそうです。
ギリシャ債務問題から南欧諸国いわゆるPIIGSの債務問題に波及。市場に黄色信号がともる都度に欧州金融安定化基金やECBによる国債買い入れなど様々な対策が打たれてきました。そして、ここへ来てリスクはイタリア債務問題のクローズアップとともに周辺国からユーロ圏の核となる諸国へと広がり、また国債のソブリン・リスクと共に社債リスクへの影響も大きくなっておりこれまでの欧州債務問題からの波及に質を変えたリスクも加わったことを意識させます。
これまで逃避資金の受け皿とされてきたドイツ国債が下落。直接のきっかけとなったのはドイツ10年国債の入札が大幅な札割れ(39%がドイツ連銀引受)でした。ブンズと呼ばれるドイツ国債の10年物金利は年初の3%水準を最高にして債務問題や景気の悪化とともに低下を続け、9月末には1.6%台の最低利回りまでつけましたが、札割れショック後は1.9%水準から直近2.33%まで利回り上昇(価格低下)しました。
国債の保証料を取引するクレジット・デフォルト・スワップ市場でドイツ国債(5年物)は年初の59BPから11月25日には117BPまで上昇。秋口からフランスとドイツの信用保証料の上昇には注目していましたが、ベルギー、オランダ、フィンランド、そして特にオーストリアといった問題国ではない国にも国債信用問題が伝染してきた事が金融市場の恐さを示しています。日本では代表的な投資信託や生命保険会社はイタリア国債などの売却を行ったと伝えられています。あるリスク回避が他のリスクを高めていく恐さがあります。
日本国債も米系格付け会社による信用格下げに加えて国債リスクへの上昇と共に保証料は月初の96BP水準から直近では130BP水準まで上昇。このところリスク回避の受け皿の一つとも言われていた日本国債でしたが、10年物日本国債は月初の1%割れから直近で1.07%まで売られる場面があり日本の深刻な債務問題にも市場の焦点があたるのでは!?との連想も浮かびます。
このところ、リスク回避の受け皿となっているのは、米国債、英国債とされています。両国の債務問題での苦戦は知られるところですが、前者は流動性、後者は更なる金融緩和期待に支えられているということでしょう。
国債市場での信用問題は社債市場にも当然波及。欧州の金融機関発行の債券を中心に世界的に社債市場がリーマンショック後最悪のリターンになっており今後の影響が心配されます。最近ではノルウエイ輸出金融公社が投機的格付け(ジャンク級)に7段階格下げされました。日本においても発行されている債券が複数あり、この影響がサムライ債(海外企業が日本で発行する円建て債)市場、そして日本の投資家への悪影響も懸念されます。株式市場と債券市場は一般的には逆相関の動きになるので資産分散が基本と言われていますが、市場環境が更に悪化すると株も債券も売られる悪い場面もあり得ることを想定外にしない方が良いと思います。
そんな中、外国為替市場では、欧州問題によるユーロ売り、リスク回避姿勢による高金利通貨売りが目立ったわけですが、このところ少し違う動きも見受けられます。まず、リスク回避でこれまで目立っていたのは円買いやスイス・フラン買いでした。特に円は独歩高となっていました。最近の米国経済指標の穏やかな改善を背景に、年末要因や欧州金融機関の信用問題にからんだ米ドルへの資金需要によるドルの反転傾向が出ています。主要通貨に対するドル指数は10月終りの74.72を本年9月来の安値にして反騰。直近では10月月初の高値79.80に迫る79.70台をつけました。
年初来の通貨別リターンは対ドルで上昇したのは円(4%)、スイス・フラン(1.6%)のみでユール、豪ドル、他アジア通貨も対ドルでの下落が目立ち、円の独歩高ではありますが、10月末には7%近い上昇でしたのでリスク回避が緩和された環境でもない中での変化に注目したいところです。
日本政府による市場単独介入で75円台から一時79円台をも示現しましたが、その後は76円台に戻した後は下値を徐々に切り上げて78円がらみまでの円反落(ドル上昇)が見らます。
もう一つ気づくのは、人民元の動きです。国際圧力により人民元の水準調整による人民元高傾向にありましたが、最近中国の金融政策委員会筋から、人民元の調整は終わり、人民元は今後2年間に下落圧力に直面する可能性がある主旨の発言も出ており、上昇続けてきた人民元相場にも反落の兆しも見られています。
円も含めたこのような動きが一時的なのか、中長期的なトレンド転換なのか未だ見えない部分もありますが、年末から年始にかけての動きにはトレンド転換の可能性も含めて注意を払っていく必要がありそうです。
本号も最後までお読みいただきまして、大変ありがとうございました。
*上記コメントは11月29日終値の情報を元にしています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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ギリシャ債務問題から南欧諸国いわゆるPIIGSの債務問題に波及。市場に黄色信号がともる都度に欧州金融安定化基金やECBによる国債買い入れなど様々な対策が打たれてきました。そして、ここへ来てリスクはイタリア債務問題のクローズアップとともに周辺国からユーロ圏の核となる諸国へと広がり、また国債のソブリン・リスクと共に社債リスクへの影響も大きくなっておりこれまでの欧州債務問題からの波及に質を変えたリスクも加わったことを意識させます。
これまで逃避資金の受け皿とされてきたドイツ国債が下落。直接のきっかけとなったのはドイツ10年国債の入札が大幅な札割れ(39%がドイツ連銀引受)でした。ブンズと呼ばれるドイツ国債の10年物金利は年初の3%水準を最高にして債務問題や景気の悪化とともに低下を続け、9月末には1.6%台の最低利回りまでつけましたが、札割れショック後は1.9%水準から直近2.33%まで利回り上昇(価格低下)しました。
国債の保証料を取引するクレジット・デフォルト・スワップ市場でドイツ国債(5年物)は年初の59BPから11月25日には117BPまで上昇。秋口からフランスとドイツの信用保証料の上昇には注目していましたが、ベルギー、オランダ、フィンランド、そして特にオーストリアといった問題国ではない国にも国債信用問題が伝染してきた事が金融市場の恐さを示しています。日本では代表的な投資信託や生命保険会社はイタリア国債などの売却を行ったと伝えられています。あるリスク回避が他のリスクを高めていく恐さがあります。
日本国債も米系格付け会社による信用格下げに加えて国債リスクへの上昇と共に保証料は月初の96BP水準から直近では130BP水準まで上昇。このところリスク回避の受け皿の一つとも言われていた日本国債でしたが、10年物日本国債は月初の1%割れから直近で1.07%まで売られる場面があり日本の深刻な債務問題にも市場の焦点があたるのでは!?との連想も浮かびます。
このところ、リスク回避の受け皿となっているのは、米国債、英国債とされています。両国の債務問題での苦戦は知られるところですが、前者は流動性、後者は更なる金融緩和期待に支えられているということでしょう。
国債市場での信用問題は社債市場にも当然波及。欧州の金融機関発行の債券を中心に世界的に社債市場がリーマンショック後最悪のリターンになっており今後の影響が心配されます。最近ではノルウエイ輸出金融公社が投機的格付け(ジャンク級)に7段階格下げされました。日本においても発行されている債券が複数あり、この影響がサムライ債(海外企業が日本で発行する円建て債)市場、そして日本の投資家への悪影響も懸念されます。株式市場と債券市場は一般的には逆相関の動きになるので資産分散が基本と言われていますが、市場環境が更に悪化すると株も債券も売られる悪い場面もあり得ることを想定外にしない方が良いと思います。
そんな中、外国為替市場では、欧州問題によるユーロ売り、リスク回避姿勢による高金利通貨売りが目立ったわけですが、このところ少し違う動きも見受けられます。まず、リスク回避でこれまで目立っていたのは円買いやスイス・フラン買いでした。特に円は独歩高となっていました。最近の米国経済指標の穏やかな改善を背景に、年末要因や欧州金融機関の信用問題にからんだ米ドルへの資金需要によるドルの反転傾向が出ています。主要通貨に対するドル指数は10月終りの74.72を本年9月来の安値にして反騰。直近では10月月初の高値79.80に迫る79.70台をつけました。
年初来の通貨別リターンは対ドルで上昇したのは円(4%)、スイス・フラン(1.6%)のみでユール、豪ドル、他アジア通貨も対ドルでの下落が目立ち、円の独歩高ではありますが、10月末には7%近い上昇でしたのでリスク回避が緩和された環境でもない中での変化に注目したいところです。
日本政府による市場単独介入で75円台から一時79円台をも示現しましたが、その後は76円台に戻した後は下値を徐々に切り上げて78円がらみまでの円反落(ドル上昇)が見らます。
もう一つ気づくのは、人民元の動きです。国際圧力により人民元の水準調整による人民元高傾向にありましたが、最近中国の金融政策委員会筋から、人民元の調整は終わり、人民元は今後2年間に下落圧力に直面する可能性がある主旨の発言も出ており、上昇続けてきた人民元相場にも反落の兆しも見られています。
円も含めたこのような動きが一時的なのか、中長期的なトレンド転換なのか未だ見えない部分もありますが、年末から年始にかけての動きにはトレンド転換の可能性も含めて注意を払っていく必要がありそうです。
本号も最後までお読みいただきまして、大変ありがとうございました。
*上記コメントは11月29日終値の情報を元にしています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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