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インドを視察。その報告です。
■1■インド経済
■デカップリング
GDPは日本の1/4程度ですが、二桁成長を続けています。
また、富裕層が急増しています。
インドでは、1億円相当以上の資産を持つ世帯が毎年1万世帯づつ増えている、
といわれています。
1億円以上の資産を持つ世帯は推定で12万世帯。
インドで1億円は、日本で5−10億円の価値。
インドから海外へ旅行者数は、年間850万人。
タイのバンコクでのショッピング金額では、インドは日本に次いで2位とのこと。
インドは、購買力もついてきました。
リーマンショックの後、世界景気が落ち込む中で、インドは高成長を続けることができました。
2年前に流行った「デカップリング」を地でいったのです。
インド経済に対して、世界の投資家は、自信を深めています。
■インフレ
デリーのオフィス賃料が3年で3倍。
食品を含めて、10%以上のインフレ。
■ローンの普及
高度経済成長をささえるのは、安価な労働力を背景にした製品の輸出に加え、
旺盛な内需(消費)です。
インドの内需は、ようやく普及期に達したローンの登場が支えています。
マンション、自動車、高金利にも関わらず、ローンを利用する人が増えています。
20才代の若者は、マンションを買うそうです。
それも、1つではなく、2つ買う人が多いそうです。
住宅も、買えば、価格が急騰するため、みんながうまくいっています(右肩上がり)。
住宅ローンは支払い3万円/月で15年ローン程度と期間は短め。
金利は、自動車ローンなどは10%、住宅も一桁後半という金利なので、銀行も儲かっています。
車は5年ローンが主流。
住宅は15年が主流。(平均寿命も40歳台)
インフレと金利が見合っている印象。
■開発投資・地価上昇・雇用創出・ローンの普及・消費拡大の好循環
世界中の資本がインドへの投資を行い、デベロッパーとしての投資だけではなく、
生産拠点の新設や拡充で、大規模な工場投資が行われています。
大きな工場をひとつ立てれば、数百人単位で新規雇用が生まれます。
工場建設、雇用の発生、消費の拡大、不動産開発、貸し出しの増加、
さらに工場投資、消費拡大、という好循環が発生します。
インド国内の銀行も数年で支店の数が倍増するなど、法人、個人への貸付も大幅に増えています。
■歴史の浅い自由化路線
いまこれだけの高成長ができる要因は、経済自由化をして、まだ10年ちょっとという年月の浅さにあるでしょう。
逆にいえば、日本よりも100年以上も経済成長が遅れるぐらい、だめな国だったのです。
カーストという厳しい身分制度の名残や極端に厳しい気候や水や電力の不足など、経済の発展には、元々向いていなかった国。
■普及する携帯電話や自動車
インドのローエンドの庶民は、家がなくても、携帯はあるという人もいて、普及率は40%。
加入者は5億件を突破。3年ちょっとで5倍になりました。
携帯の普及期です。
ちなみに、携帯電話の端末シェアではノキアがシェア70%。続いて三星やLGなど韓国が健闘。
■貿易収支の赤字
09年は貿易赤字で10兆円。
財政赤字は、GDPの7%程度。
■2■教育・文化・慣習
■デリーの若者の上昇志向
インドでは教育だけが、自分を押し上げる条件。
教育投資に熱心。
たとえば、日本語を勉強して、日系の工場で働きたい若者は多い。
日本語教室は、年間3万円というインド人にとっては高いにも関わらず、クラスは満杯でした。
(日本のアニメを見て、日本語に興味を持つ)
ハングリー精神が旺盛な人が多い。
(人口が多いので、そういう人の絶対数が多いだけかもしれませんが・・・)
ただし、アグレッシブではなく、インドの人は全般的に親切で優しい。
■難関
国家上級公務員は100人の枠に対して20万人が受験する極めて狭き門。
毎年、250万人が大学を卒業します。
平均年齢40代台のインドでは、ドロップ・アウトする小学生の数だけで、
毎年数千万人に上る。
(人口の50%は25才以下)
すごいスケールです。
■使い倒すまで使い切る?
インドデリー空港で、両替をしましたが、
ルピー規制のため、両替にはパスポートが必要。それいちいち店員がコピーします。
空港のコピー機は、シャープ製だったが、コピー機はまっ黒けでした。
一体、何年つかっているのか??というひどい状態。
これは自動車も同様で、ほとんどの自動車は、ぼこぼこ。
レクサスであっても、ぼこぼこになって走っているのです。
接触するのは日常茶飯事で、死んだら保険がでるが、
事故では保険が出ない。死なないと保険がでないと聞きました。
クラクションも絶えず鳴らしながら、
急加速と急停車を繰り返すので、日本で乗るより、数倍、
車に負荷がかかる乗り方です。
わたしは東京で車を運転することがありますが、デリーでは危なくて車は運転できないと思いました。
バスや電車にもエアコンがないものもあり、
夏は、みんな汗だくだくだそうです。
でもそれが普通なのだそうです。
バスはラッシュアワーでは、窓から人がはみ出ていました。
生命力がすごいですね。
ただ、日本の満員電車、ラッシュアワーも負けていません。
その点は、日印同じですね。
■テロリスト
隣国にパキスタンを抱えるため、各都市で無差別テロが頻繁に起こっています。
商業施設などに入るたびに、手荷物検査があります。
テロがあるため、かなり不自由です。
ホテルに入るたびに、金属探知機。
レストランに入るたびに、金属探知機。
非効率でストレスを感じます。
テロがここまでひどいというのは、宗教の対立だけではなく、経済格差問題も影響しているのではないでしょうか。
■3■開発 直接投資
■開発ラッシュ
デリー近郊は、いたるところで開発ラッシュです。
ホテル、オフィスビル、ショッピングモール、レジデンスマンションなど、複合開発が猛烈なスピードで進んでいます。
郊外を車で走れば、あそこにも、そこにも、新しい開発プロジェクトだらけです。
ホテルで、現地の新聞を読んでいたら、大規模なショッピング・モールに、出店しませんか、という広告があって、びっくり。
(このモール近辺には2万人の居住者がいますとの誘い文句)
デリーからムンバイへ向かう高速道路の横には、次々と商業ビルやオフィスビルが建設中となっていて、
インフラへの投資はかなり高水準との印象を受けました。
■活躍する地元資本
インフラ投資では、地元資本(DLFなど)がデベロッパーの主役です。
小売には外資規制があり、外資は小売では51%までしか出資できません。
サービス産業においても地元資本が保護されています。
■フラット化する世界? 規格化された開発物件
香港や上海やデリーやドバイという地域別の個性はなく、世界中で同じような高級ショッピング・モールができています。
そのモールには、グローバル・ブランドが例外なく入居しています。
インドにおいても、リーボックやBMWなどの「世界のブランド」がもれなく入っています。
丁度、日本においても、数十年間で、ほとんど、駅前の商店街が壊滅状態となり、どこへ行っても、セブンイレブンとマクドナルドという街並みになったとの同じ印象。
どれも、高層化・容積率を意識した効率的なインフラ投資で、均一的、画一的な印象。
確かに、どの建物も、快適で清潔できれいな建物ですが個性がありません。
■特区
経済特区はあるが、特区からインドへの出荷は、輸出とみなされ、
24%の税(関税を中心にしたもの。税金は複雑)がかかります。
そのため、多くの海外企業は、特区を選ばないそうです。
■法人税
インド内国の法人税は30%
■自由化ではあるが、外資を特別扱いはしない
地元資本が、海外メーカからのOEM製品を生産する見通しをたてて、
OEM先が決まる前に、とりあえず工場だけを建てるケースもあります。
(経済が成長しているので、リスクをどんどん取る)
海外メーカが、政府は中立。
インドに工場を建てる場合、水や電気などのインフラは、
「勝手に探してください」という当局のスタンスで、かなり大変そう。
河は、大きいが、流れが悪く、乾季もあり、水不足は深刻。
雨量が少ないと生産活動に制約が生じます。
電力も不足。
それを自前で、安いコストでそろえなければなりません。
販売網をどうするかが、この広いインドに構築するのは、大問題でしょう。
多くの海外企業は、数社の代理店をそれぞれ地域割したり、相互に競わせているようです。
代理店を競わせないと、インドの地元の代理店に「やられる」。
競争原理を導入して、地元代理店を競争させることが、
ビジネスのポイントのひとつだと現地ビジネスマンから教えてもらいました。
■高い通信費、スポット広告、安い電力
通信費は、食料品などと比べると割高のように思います。
Mbps単位の通信をしようとすれば、月5000円程度は必要になる。
これはインド人の給料が平均で2万円ということを考えれば、外資系に勤めていないと払えない額でしょう。
kbps単位でADSLよりも遅い通信であれば、月2000円程度です。
まだ、高速のネット環境は整っていません。
電力は、1kw時で8円強程度で日本よりかなり割安です。
TV広告は、10秒で1000−1600万円です。ものすごく高い印象。
(人気のあるクリケットのプレミアリーグ向け)
■デリー進出のコスト・問題点
インドを単に、コストの安い生産拠点として選ぼうとしても、以下の理由から、困難が伴います。
1)水や電力などの安定供給に難がある。
(水や電力は自分で探せ、というスタンス)
2)関税が24%に上る。
3)輸送コスト。内陸の交通事業が粗悪で内陸コストが高い。
4)オフィスコスト。デリーなど都市部のオフィス不足は甚だしく、デリーで築30年でエアコンがないオフィスビルであっても、東京丸の内よりオフィス賃料は高い。
5)治安。イスラム原理主義やマフィアの横行。自爆テロが多発。
6)法人税30%はそれほど安くない
7)通信コストが高い
8)テレビ広告が高い
工員の給与は1ー2万円程度/月額と格安。
しかし、恒常的に高速道路は渋滞であり、道路事情の悪さから、内陸輸送コストはかなり高くつきそうです。
さらに、オフィス賃料が高いのです。
また、インド人は、基本的におだやかだが、共同で働くという経験に乏しい。
わたしが乗ったインド航空機内では、スチュワーデスが、暇になると、乗客の座席に座って映画を見ていました。
インドの人は、あまり働かないのでしょうか。
こういう人たちに、チームワークや高い生産性を持たせるのは、相当な困難を伴いそうです。
多くの企業は、こうした困難を克服できず、インドへの本格投資をためらっています。
(つづく)
次回は、
■4■インドにおける勝ち組外資企業と負け組外資企業
■5■結論 高成長を取り込めるインド関連企業への投資は有効
をお届けする予定です。
山本 潤
日本株ファンドマネージャ
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
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