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投資情報メールマガジン 2010/02/24号
イ意 の 近 道
−プロが導く「億」資産への近道− 週5回発行
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【ご挨拶】
将来の資産形成のために個人投資家の方にも機関投資家並以上の情報提供を
したい。また同時に、当メルマガを通じてより多くの方に自立した投資家を目
指していただきたいと考えております。各種分析やコラムを参考にして、「億」
の資産を目指し、自立した投資家への道を歩みましょう!
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−本日の目次−
(本日の担当:山本潤&式町みどり)
◆コラム「ユーロはまだ下がる?」:式町みどり
◆コラム「リストラの費用」:山本潤
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◆コラム「先物金利から為替相場を見る〜ユーロはまだ下がる?」
2週間前に自己紹介を中心の初投稿を掲載いただきましたところ、あたたか
い励ましのメッセージをいただき大変嬉しく思っております。お忙しい中、貴
重なお時間を費やしてメッセージを下さった皆様に感謝申し上げます。
さて、今年に入ってからの為替マーケットで最も顕著な動きだったのは、ギ
リシャの財政赤字問題に端を発した国家の信用問題、いわゆるソブリン・リス
ク懸念によるユーロ売りでした。
ユーロは約9カ月ぶりの安値まで下落し、年初から2月23日まで、対ドル
でマイナス5.7%とG10諸国の中でもっとも下落率が高くなっています。
現在は昨年5月に対ドルでユーロが上昇しはじめた際の基点となった1ユーロ
=1.34−1.35米ドル水準まで戻ってきたところでサポートされた格好
にはなっています。また、ユーロは主要通貨中、対英ポンドで1.27%下落、
対豪ドルで5.01%下落、そして対円では8.55%とリスク回避の円高と
なっていた分、対円での下落幅が大きくなりました。
シカゴの通貨先物市場において、過去最高水準のユーロ売りポジション(2
月16日現在で59,422枚の売り越し*1枚は12.5万ユーロ)が累積
していたこと、これまでの動きでかなりの材料は織り込んでしまい、エネルギ
ーの多くが発散されている可能性も考慮すると、一方通行のユーロ売りは一段
落して新たなレンジ相場を形成するとの見方もできますが、先物金利が示す金
利動向がユーロ買いにはつながらないという見方も出ています。
将来のある日付からスタートする、一定の期間の金利を取引するFRA
(Forward Rate Agreement)というデリバティブ取引があります。個人投資家
の方にはあまり馴染みがないと思いますが、金融機関同士または一般企業が将
来の金利変動リスクをヘッジしたり、金利変動リスクをトレードする取引です。
例えば6か月先スタートの3カ月物、現在の日付で言えば今年の8月スタート
の3カ月もの金利は6×9というような名称で取引されます。上場されている
金利先物市場での取引に比べると、日付が柔軟に取引される相対取引です。
スポットの短期金利は、中央銀行の政策金利に準じたレベルで取引され、市
場の今後の金利に対する見方が読みにくいのですが、先物金利には市場の金利
への思惑が表れて来ます。
銀行間の短期金利の指標であるロンドン銀行間貸出金利(LIBOR)3カ
月物は2月23日現在で米ドル0.25194%、ユーロ0.6075%、ス
プレッド0.35556%に比べて、FRA金利は1年後の3カ月もの(12
x15)で米ドル1.1811%、ユーロが1.3670%とスプレッド0.
1859%に。2月月初には同期間で米ドル1.20%に対してユーロは1.
60%とスプレッドが0.40%もあったことに比べると、市場参加者の間で
ユーロが低金利を継続する可能性がこれまで以上に高まっていることの表れと
も理解することもできます。
財政問題が懸念されるPIIGS(イタリーは微妙だと除外してPIGSと
も言われますが)が、財政引き締めによる経済停滞を金融緩和でサポートして
いくとの見方から、米金利との金利差が縮小、ユーロの上値を重くする可能性
が高まります。
ユーロは共通通貨ですので、ユーロ圏平均から良くも悪くもかい離した国が
あっても、政策金利は平均をメドにして運営していくとされていますので、短
期の実質金利が国によって大きくばらつき、矛盾が出てくることは過去の推移
からもわかります。
今後の注目点はやはりギリシャのスケジュールでしょう。3月16日に追加
の財政赤字削減予算の目標達成に向けた追加策提出期限が、そして4月、5月
には200億ユーロの国債償還があり、利払いも含めて約250億ユーロが必
要とされています。
投機筋の売り方のショートカバーも入り、いったん小康状態となっているユ
ーロ相場。為替相場は金利差のみだけで語れるものではありませんし、主要国
のほとんどが脛に傷持つ身ではありますが、ユーロの暗部に改めて焦点があた
ったとき、期待されたその優位性が更にはがれる可能性が高まります。
現時点で、まだ下値が確認されたと判断するに至っていないと私は考えてト
レードしています。
(式町 みどり)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関し
ては御自身の責任と判断で願います。)
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◆コラム「リストラの費用」
わたしは、長い間、日本株のアナリストをしてきました。
時が経つのは早いものです。
いまでは、若いアナリストの収益予想を指導する立場になりました。
若いアナリストは、経験に劣るためでしょうか、
経営者に、簡単に「騙される」ケースが多々あります。
その典型的なパターンは、企業によるリストラ計画です。
08年秋に、金融危機、ハーフエコノミーなど、景気の急激な落ち込みを、
わたしたちは、経験しました。
その後、日本企業の多くが、大胆なリストラ計画を発表しました。
わたしは1年ぐらい前のコラムで、厳しくても従業員を解雇しない企業を応援
する、と書きました。
たとえば、メイテックのように、需要が急減しても、従業員を解雇せず、雇用
を守り、仕事がない間に、黙々と企業研修を社員に施し、自己研鑽などを奨励
し、次のステップに大きく飛躍できる企業を応援したい、と書いた記憶があり
ます。
ところが、一般的に、証券アナリストは、社員をカットする企業のリストラ案
を前向きに評価してしまいがちです。
企業が、リストラ計画を発表するとします。
リストラ計画は、人員削減などが含まれます。
その削減されるであろう固定費を、若いアナリストは増益要因にしてしまいが
ちです。
たとえば、企業が50億円の人件費を削減する、と発表します。
アナリストは、安易に来期の利益に50億円を上乗せしてしまうのです。
実は、それは、大変に間違った考えです。
===リストラ発表前のアナリスト収益予想===
売上げ1000億円
利益 30億円
↓↓↓
===リストラ発表後のアナリスト予想「買い」格付け===
売上げ1000億円
利益 80億円(前回予想比+50億円)
(リストラによる固定費の改善50億円分を加味)
■間違った予想
わたしたちの運用チームは、企業のリストラの効果を、全く信じません。
むしろ、リストラをする企業は、リストラが契機になり、競争力を失い、衰弱
して、ひどい場合は、倒産して消えてしまいます。
リストラは、
企業を人間に例えるなら、日ごろの不摂生がたたって、
急に大手術が必要になった患者のようなものです。
企業経営者の役割は、日ごろから、企業を健康状態に保つことです。
傍若無人にふるまう組織を、経営者が制御できないパターン。
あるいは、経営者が私利私欲に走って、自身を含めて組織を私物化してしまう
パターン。
リストラに陥る背景には、様々なパターンがあります。
同じ業界に属しながら、日ごろから節制をして、
筋肉質で潤いのある組織を保つことができる企業がある一方で、
安易な設備投資、過大な人員拡大の後に、景気が減速したとたんに、一転、リ
ストラに走る企業も存在します。
リストラの効果を、わたしたちが収益予想に含めない理由は、単純明快です。
■理由その1
− 自社をリストラに追い込むような経営者は信頼できないから
まず、自社をリストラ(大手術)に追い込む経営者は信頼できない、というこ
とです。
いつも組織を健康に保つ義務が経営者にはあります。
大手術をしなければならない事態を招いた責任は、従業員にはありません。
失態の責任は、すべて経営者にあります。
大失態の責任をとるのは経営者であって、従業員ではありません。
経営がへたくそな企業の株を買えないのは当たり前の話です。
■理由その2
− リストラ計画は、計画通りにいかず、高い確率で失敗するから
わたしたちが、企業のリストラ計画を相手にしない理由は他にもあります。
なぜなら、リストラは失敗してしまう可能性が高いからです。
普通に考えればわかることですが、従業員をカットする場合、
先に辞めるのは、一番、やめてほしくない社員です。
いつでも転職できる、能力の高い、でも会社に忠誠心があるために、会社に残
ってくれている社員がいるとします。
でも、そんな彼らであっても、
リストラをする経営者への信頼は、大きく揺らいでしまうでしょう。
リストラ計画とは、一緒に働いてきた仲間が解雇される、ということです。
あえて自分で入りたいと選んだ企業です。
忠誠心があるのは当たり前です。
しかし、仲間が解雇されるとわかったとたんに、その一番、大切な炎が消えて
しまうのです。
できる社員が辞めることは、企業にとっては、致命的です。
組織に根付いたノウハウが喪失してしまいます。
リストラされずに残った社員は、どうでしょうか。
当然、士気が落ちてしまいます。
「次はわたしかもしれない」。
「いまのうちに転職活動しよう」。
こんな士気の低いチームは、実業という厳しい競争の中では、連戦連敗となり
ます。
リストラをした企業の市場シェアがどんどん低下してしまうのは、当然の成り
行きです。
残った従業員たちは、士気が落ちるだけではありません。
社員は、不安になります。次は誰が首になるのか。
リスクを恐れ、失敗を恐れるようになります。
失敗を恐れ、何もしなくなる、後ろ向きの社員がいる組織では、企業はまとも
に業界で闘うことさえできません。
そんな社員たちは、仕事をするどころか、経営者の目を盗んで、さぼるように
なります。
「こんなアホな経営者のしたで働くのは馬鹿らしい」と思うようになるからで
す。
仮に、経営者が、リストラをしながら、そのまま経営に居残ってしまう。
こんなバカなことが、もし、まかり通れば、
会社がだめになってしまうのは、当然のことです。
■リストラ企業の業績予想への示唆
なぜか、若いアナリストは、企業のリストラ計画を、評価してしまう。
アナリストは、社員と同じ目線で経営者を評価しなければなりません。
「この世の中で成功したリストラはない」といってもよいぐらいです。
「社員を犠牲にして利益が増える」と考えるような社長を応援しても、株価は
上がらないのだから、投資家として意味がないでしょう。
冒頭の数値例ですが、熟練したアナリストは、企業のリストラ発表を聞いた後、
こんな予想になるでしょう。
===リストラ前のアナリストの収益予想===
売上げ1000億円
利益 30億円
↓↓↓
===リストラ後遺症に陥った企業の収益予想「売り」格付け===
売上げ 800億円 (シェアの大幅な低下)
赤字転落▲30億円(当然赤字)
↓↓↓
===その後、数年後に追加のリストラを発表===
売上げ 500億円(さらに大きくシェアが低下)
赤字転落 ▲50億円(赤字拡大)
↓↓↓
===さらにリストラ計画の発表===
↓↓↓
===さらに売上げの減少という悪循環===
リストラをして下がるだろう固定費が50億円であれば、
それによって、失うであろう売上げは100−200億円以上と見るのが自然
です。
(出来る人がやめて、残った平均的な人がやる気を落とすという前提)
このように、リストラの評価の違いで、
本来であれば、カラ売りとなるべき株が、「買い」になるわけです。
リストラへの前向きな評価は、アナリストとして恥じるべきものだとわたしは
考えるようになりました。
もちろん、様々な理由で、リストラ致し方なしという会社もあります。
(消費者金融のように業界規模が縮小してしまう場合のように、彼らのリスト
ラ、これは致し方ない)
しかし、リストラへの恒常的な前向き評価は、
企業を弱体化させるだけでなく、
消費を落ち込ませ、
経済をだめにしてしまいます。
経済がだめになれば、さらに無能な経営者はリストラをしようとします。
この悪循環に、日本の上場企業は陥っています。
幸い、わたしたちのように、「リストラ企業は購入しない」と宣言する投資家
も徐々に増えてきているように思います。
株式市場に関わっているからといって、経営者の独善的な判断をすべて受け入
れる義務は投資家にはありません。
■P.S.
わたし自身も、最初に入社した証券会社に7年ほどお世話になりました。
4年目ぐらいから、転職の誘いを受けるようになりましたが、会社への忠誠心
から、転職の話はすべて断ってきました。
会社への忠誠心が揺らいだのは、経営者への信頼が低下したからでした。
職場の仲間が好きでした。
でも、三洋証券や山一証券が倒産するなど確かに業界の環境はバブル崩壊後に
厳しさをましていきました。
そんな中で、経営者のリストラ計画にいや気がさしてしまったのです。
経営ビジョンがない、銀行からの天下り経営者が居残って、生え抜きの社員を
リストラするのは、現場では、気分がよいものではありません。
優秀な先輩が、次々と会社を去っていきました。
わたしの所属していた課は、解体されました。
わたしにとって大切なものがなくなり、大切な仲間がいなくなってしまったの
です。
それでも、わたしはラッキーだったのかもしれません。
幸いにも、今とは違って、転職先はたくさんありました。
日本の株式市場は、海外の投資家から見れば、まだまだ宝の山に見えていた時
代でした。
山本 潤
日本株ファンドマネージャ
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関し
ては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者
の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
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