投資アイデアの創出 最終回 スロー・インベスター



■アイデアの生成過程についての連載を終わります■


 2004年1月6日から投資のアイデアの生成過程についての連載をしてきました。


 発端は、雑誌でした。
 日経エレクトロニクスの2004/1−5号を読んでアイデアを出しました。

 以下は、メルマガ「億の近道」バックナンバーの2004年1月6日号の抜粋です。

『以下 抜粋〜

P53 Dellのテレビ参入。画像処理ICが台湾系がぞくぞくと参入してくる。いやな感じ。米国のファブレスIC設計会社であるGENESISやPixcelWorksなどを調べないとなあ。(アイデア1とします)

P71 インテリジェンスが忙しい。リアルタイムOSや回路など求人が上回っている。そうか。インテリジェンスはちょっと高かったな。それでかなんて思う。富士ソフトABCなんかはチェックしてみないと駄目かなとふとチェックリストに富士ソフトと書く。(アイデア2とします)

〜中略〜

P91 Pbフリー。
タムラは最近元気かな。ちょっと気になる。さっそくチェックリストに書いておく。RoHSで2006年の規制で恩恵なのかそれともコストアップの面もあるのか。チェックしたい。
そして、実装の部品で耐熱性が求められるということになると、いろいろあるけど、一時的に日系のシェアが上がるかもしれんなと漠然と思う。(アイデア3)

そして、タムラ製作所や富士ソフトにさっそく取材のアポをいれたのでした。』

以上、抜粋でした。


〜アイデア1からの銘柄〜


 その後、ラスベガスの家電ショーに行き、アイデア1を確認。

 ビクターという思いがけない銘柄(リアプロ)に出会いました。
 ビクターのプレゼンを見る。1月前半。
 購入の検討を開始。しかし、株価は反応。
 1月には、家電メーカーへ資金が流れました。
 IRを取材。2月まではそれでOKでした。
 株価が高値を更新している間は、買えません。
 じっくりと長期戦に持ち込むことにしました。

 3月前半。
 有沢製作所の子会社カラーリンクから主要部品を調達していることをチェック。
 有沢の子会社が赤字から黒字に転換予想をしていることを確認。
 それでも、まだ、買えません。

 3月の終わり。
 ようやく、歩留まりを確認。
 それでも、まだ、買えません。

 4月6日にビクターのリアプロの関係者がスモールミーティングをすることが決定。

 スモールを会社がやり、リアプロ関係者が出てくるということは、会社が目先の自信があるからだろうと推定しています。
 勝負としては、短期的(今後数ヶ月)は面白い銘柄になります。

 株価は1000円を固めてきました。買うなら今です。

 しかし、本当の長期はどうか。迷う今日この頃です。迷って迷って数ヶ月。
 判断はスローです。


■アイデア1の結論:アイデア1から、LG電子を購入。(1月後半)■


 1月の時点で、わたしは、LG電子を購入しました。理由は単純です。
 ハイスペックの日本。ロースペックの中国。韓国は世界的にブランドが認知し始めています。よい位置にいるわけです。
 松竹梅の竹。みんなの注文が集まる位置です。おまけにPERも一ケタ。
 政治の混乱は痛いのですが、短期的なものでしょう。

 その後、ビクターを買うかパイオニアを買うかで、迷いました。
 しかし、パイオニアは、買いの候補から落ちました。
 なぜなら、PDPの価格帯の中でももっとも高い価格をつけているパイオニアが、値下げのリスクが高いからです。

 ピクセルワークスやジェニシスという米国の会社のPERを見て、こういう画像エンジンのビジネスがこれだけの高い評価を得られるということを確認。
それならば、ビクターのもつ画像エンジンの技術に対して値段をはじきました。
 明らかに、ビクターに有利な条件です。
 ビクターは、液晶やPDPやCRTやリアプロのほとんどのプラットフォームで画像エンジンを供給できる。ピクセルワークスばりの評価を与えてもいいかもしれません。

 まず、LG。それから、三星。今後、日本では、ひとつを選ぶつもりです。
 選ぶならビクターでしょうが、選ぶ意味があるのか、考えがまとまりません。


■アイデア2の投資判断に至る道のり■


 鉛フリーのアイデア。
 タムラ製作所フトは、1月に訪問。

 実際は、
1)アイデアのベースで、面白いと思った。
2)取材をしたら、思いがけず業績の見通しもビジネスの内容もよかった。

 鉛フリーで実装関係のビジネスが大きく伸びていました。
 さらに、圧電インバーターが液晶TVで採用が決まりそうだという。
 普通なら「買い」です。

 しかし、スロー・インベストメントのわたしは、買いませんでした。

 他の圧電インバーターの会社もチェックしたくなったからです。
 そこで、NECトーキンをチェック。

 ところが、圧電インバーターではなく、思いがけず、ブロードライザーという面白いコンデンサと出会った。
 ここまでが1月です。

 2月。研究者に頼んで、ブロードライザーの調査を依頼。レポートは1ヶ月近くかかって手元に届きました。
 外部のコンサルタントを使うのは、わたしのよくやる手です。

 トーキンかタムラか。

 悩みましたが、どちらも購入に至りませんでした。

 理由は、小型すぎるということ。
 そして、PERがそこそこ高いということ。
 さらに、それぞれに熱烈な支持者がいること。
 証券会社や機関投資家がすでにチェックをしているために、評価がすでに高かったのです。
 また、ハイテク株は、今年中にピークアウトする可能性があるため、2006年もいけるかどうかに自信がなかったためです。


 結論:アイデア2から、銘柄選択に至らなかった。


■アイデア3の投資判断までの道のり■


 1月に富士ソフトを訪問。

 取材は確認作業です。
 まず、携帯電話の多機能化、高機能化の流れで恩恵を受けることを確認。
 昨年の下方修正の大きな要因を分析。それが今後、起こる可能性が低いことを確認。

 アイデア。そして、取材。
 ここでよければ「買い」かというとそうではありません。

 富士ソフトの場合は、
1)人気がなかった。なぜなら、昨年、大きな下方修正を2度出しているため、投資家から嫌われていた。
2)しかし、会社計画は保守的だった。業績不安がなかった。
3)NECソフトなど大きな下方修正が相次いで起こり、つれ安してくれた。

 3500円を割り込んだとき、買い。

 その後、同じような会社をチェック。
 アクセス。
 システムプロ。
 NECシステムテクノロジー。

 以前は、ソフト開発は、企業向けのシステムが大きかったのですが、携帯が高機能、多機能化することで、携帯の膨大なソフト開発が問題になってきました。

 その開発の波に当たる第三世代の本格普及期を迎えて、組み込みソフト・アプリケーションソフトの需要が堅調に伸びると推定していました。

 3月の終わり。
 富士ソフトは出来高を伴って急騰。
 一部を利食いました。
 その利食いで出遅れていたNECシステムテクノロジーも勢いで購入しました。

 同じようなことをしているのに、PERが安いということがあります。

 なぜNECシステムテク3717を買ったのか。
1)人気がなかった。NECソフトが下方修正して、NECグループはどうなの?と疑問符がついている。
2)比較的新しい会社で、証券会社のアナリストがカバーできていないため、安値で放置されている。
3)PERが他の携帯ソフト関連銘柄と比べて安い。

 このように、ひとつのアイデアが当たると、芋づる式に銘柄が出てくるのです。
 こういうところでパフォーマンスを荒稼ぎするのです。


■雑誌値段は安かった■


 アイデアが沢山見つけることのできる専門誌は安いものですね。本の数百円か数千円ですごいアイデアが含まれている。

 アイデア3の富士ソフトは、20億円近く保有していますが、短期間に30%、6億円儲かりました。
 NECシステムテクノロジーは、買ったとたんに急騰。

 そして、アイデア1はすばらしかった。
 フラットパネルが今後数年は行けると判断したので、長期保有中の有沢製作所と日東電工を保有継続しました。

 日東電工は2000円台から保有しています。普通のマネージャーなら、手放しているはずです。

 有沢は1000円台からの付き合いです。普通ならもう売っているはずです。

 でも、まだまだこれから3年程度は保有する覚悟をしています。


 これでアイデア生成の過程に関する連載を終わりにしたいと思います。
 1月6日からの3ヶ月の連載。ありがとうございました。

 アイデアがよくても、それを吟味するには、数ヶ月の時間を要するというスロー・インベスター。

 スローでも、いいじゃないか。そう思う今日この頃です。


山本 潤
スロー・インベストメント2004
〜ゆっくり考え ゆったり投資〜


このコンテンツは、特定の銘柄を推奨するものではありません。アイデアというものは、単なる思い付きの部分も多く、投資判断を導くには未成熟・不十分・不正確なものです。ここで紹介しているようなレベルのアイデアでは、投資の役には立ちません。内容についても、関係者との立ち話が中心なので、わたしの取り間違いや聞き違いも含まれているかもしれません。内容の正確さを保証するものではありません。


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投資アイデアの創出 最終回 スロー・インベスター



■アイデアの生成過程についての連載を終わります■


 2004年1月6日から投資のアイデアの生成過程についての連載をしてきました。


 発端は、雑誌でした。
 日経エレクトロニクスの2004/1−5号を読んでアイデアを出しました。

 以下は、メルマガ「億の近道」バックナンバーの2004年1月6日号の抜粋です。

『以下 抜粋〜

P53 Dellのテレビ参入。画像処理ICが台湾系がぞくぞくと参入してくる。いやな感じ。米国のファブレスIC設計会社であるGENESISやPixcelWorksなどを調べないとなあ。(アイデア1とします)

P71 インテリジェンスが忙しい。リアルタイムOSや回路など求人が上回っている。そうか。インテリジェンスはちょっと高かったな。それでかなんて思う。富士ソフトABCなんかはチェックしてみないと駄目かなとふとチェックリストに富士ソフトと書く。(アイデア2とします)

〜中略〜

P91 Pbフリー。
タムラは最近元気かな。ちょっと気になる。さっそくチェックリストに書いておく。RoHSで2006年の規制で恩恵なのかそれともコストアップの面もあるのか。チェックしたい。
そして、実装の部品で耐熱性が求められるということになると、いろいろあるけど、一時的に日系のシェアが上がるかもしれんなと漠然と思う。(アイデア3)

そして、タムラ製作所や富士ソフトにさっそく取材のアポをいれたのでした。』

以上、抜粋でした。


〜アイデア1からの銘柄〜


 その後、ラスベガスの家電ショーに行き、アイデア1を確認。

 ビクターという思いがけない銘柄(リアプロ)に出会いました。
 ビクターのプレゼンを見る。1月前半。
 購入の検討を開始。しかし、株価は反応。
 1月には、家電メーカーへ資金が流れました。
 IRを取材。2月まではそれでOKでした。
 株価が高値を更新している間は、買えません。
 じっくりと長期戦に持ち込むことにしました。

 3月前半。
 有沢製作所の子会社カラーリンクから主要部品を調達していることをチェック。
 有沢の子会社が赤字から黒字に転換予想をしていることを確認。
 それでも、まだ、買えません。

 3月の終わり。
 ようやく、歩留まりを確認。
 それでも、まだ、買えません。

 4月6日にビクターのリアプロの関係者がスモールミーティングをすることが決定。

 スモールを会社がやり、リアプロ関係者が出てくるということは、会社が目先の自信があるからだろうと推定しています。
 勝負としては、短期的(今後数ヶ月)は面白い銘柄になります。

 株価は1000円を固めてきました。買うなら今です。

 しかし、本当の長期はどうか。迷う今日この頃です。迷って迷って数ヶ月。
 判断はスローです。


■アイデア1の結論:アイデア1から、LG電子を購入。(1月後半)■


 1月の時点で、わたしは、LG電子を購入しました。理由は単純です。
 ハイスペックの日本。ロースペックの中国。韓国は世界的にブランドが認知し始めています。よい位置にいるわけです。
 松竹梅の竹。みんなの注文が集まる位置です。おまけにPERも一ケタ。
 政治の混乱は痛いのですが、短期的なものでしょう。

 その後、ビクターを買うかパイオニアを買うかで、迷いました。
 しかし、パイオニアは、買いの候補から落ちました。
 なぜなら、PDPの価格帯の中でももっとも高い価格をつけているパイオニアが、値下げのリスクが高いからです。

 ピクセルワークスやジェニシスという米国の会社のPERを見て、こういう画像エンジンのビジネスがこれだけの高い評価を得られるということを確認。
それならば、ビクターのもつ画像エンジンの技術に対して値段をはじきました。
 明らかに、ビクターに有利な条件です。
 ビクターは、液晶やPDPやCRTやリアプロのほとんどのプラットフォームで画像エンジンを供給できる。ピクセルワークスばりの評価を与えてもいいかもしれません。

 まず、LG。それから、三星。今後、日本では、ひとつを選ぶつもりです。
 選ぶならビクターでしょうが、選ぶ意味があるのか、考えがまとまりません。


■アイデア2の投資判断に至る道のり■


 鉛フリーのアイデア。
 タムラ製作所フトは、1月に訪問。

 実際は、
1)アイデアのベースで、面白いと思った。
2)取材をしたら、思いがけず業績の見通しもビジネスの内容もよかった。

 鉛フリーで実装関係のビジネスが大きく伸びていました。
 さらに、圧電インバーターが液晶TVで採用が決まりそうだという。
 普通なら「買い」です。

 しかし、スロー・インベストメントのわたしは、買いませんでした。

 他の圧電インバーターの会社もチェックしたくなったからです。
 そこで、NECトーキンをチェック。

 ところが、圧電インバーターではなく、思いがけず、ブロードライザーという面白いコンデンサと出会った。
 ここまでが1月です。

 2月。研究者に頼んで、ブロードライザーの調査を依頼。レポートは1ヶ月近くかかって手元に届きました。
 外部のコンサルタントを使うのは、わたしのよくやる手です。

 トーキンかタムラか。

 悩みましたが、どちらも購入に至りませんでした。

 理由は、小型すぎるということ。
 そして、PERがそこそこ高いということ。
 さらに、それぞれに熱烈な支持者がいること。
 証券会社や機関投資家がすでにチェックをしているために、評価がすでに高かったのです。
 また、ハイテク株は、今年中にピークアウトする可能性があるため、2006年もいけるかどうかに自信がなかったためです。


 結論:アイデア2から、銘柄選択に至らなかった。


■アイデア3の投資判断までの道のり■


 1月に富士ソフトを訪問。

 取材は確認作業です。
 まず、携帯電話の多機能化、高機能化の流れで恩恵を受けることを確認。
 昨年の下方修正の大きな要因を分析。それが今後、起こる可能性が低いことを確認。

 アイデア。そして、取材。
 ここでよければ「買い」かというとそうではありません。

 富士ソフトの場合は、
1)人気がなかった。なぜなら、昨年、大きな下方修正を2度出しているため、投資家から嫌われていた。
2)しかし、会社計画は保守的だった。業績不安がなかった。
3)NECソフトなど大きな下方修正が相次いで起こり、つれ安してくれた。

 3500円を割り込んだとき、買い。

 その後、同じような会社をチェック。
 アクセス。
 システムプロ。
 NECシステムテクノロジー。

 以前は、ソフト開発は、企業向けのシステムが大きかったのですが、携帯が高機能、多機能化することで、携帯の膨大なソフト開発が問題になってきました。

 その開発の波に当たる第三世代の本格普及期を迎えて、組み込みソフト・アプリケーションソフトの需要が堅調に伸びると推定していました。

 3月の終わり。
 富士ソフトは出来高を伴って急騰。
 一部を利食いました。
 その利食いで出遅れていたNECシステムテクノロジーも勢いで購入しました。

 同じようなことをしているのに、PERが安いということがあります。

 なぜNECシステムテク3717を買ったのか。
1)人気がなかった。NECソフトが下方修正して、NECグループはどうなの?と疑問符がついている。
2)比較的新しい会社で、証券会社のアナリストがカバーできていないため、安値で放置されている。
3)PERが他の携帯ソフト関連銘柄と比べて安い。

 このように、ひとつのアイデアが当たると、芋づる式に銘柄が出てくるのです。
 こういうところでパフォーマンスを荒稼ぎするのです。


■雑誌値段は安かった■


 アイデアが沢山見つけることのできる専門誌は安いものですね。本の数百円か数千円ですごいアイデアが含まれている。

 アイデア3の富士ソフトは、20億円近く保有していますが、短期間に30%、6億円儲かりました。
 NECシステムテクノロジーは、買ったとたんに急騰。

 そして、アイデア1はすばらしかった。
 フラットパネルが今後数年は行けると判断したので、長期保有中の有沢製作所と日東電工を保有継続しました。

 日東電工は2000円台から保有しています。普通のマネージャーなら、手放しているはずです。

 有沢は1000円台からの付き合いです。普通ならもう売っているはずです。

 でも、まだまだこれから3年程度は保有する覚悟をしています。


 これでアイデア生成の過程に関する連載を終わりにしたいと思います。
 1月6日からの3ヶ月の連載。ありがとうございました。

 アイデアがよくても、それを吟味するには、数ヶ月の時間を要するというスロー・インベスター。

 スローでも、いいじゃないか。そう思う今日この頃です。


山本 潤
スロー・インベストメント2004
〜ゆっくり考え ゆったり投資〜


このコンテンツは、特定の銘柄を推奨するものではありません。アイデアというものは、単なる思い付きの部分も多く、投資判断を導くには未成熟・不十分・不正確なものです。ここで紹介しているようなレベルのアイデアでは、投資の役には立ちません。内容についても、関係者との立ち話が中心なので、わたしの取り間違いや聞き違いも含まれているかもしれません。内容の正確さを保証するものではありません。


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設備投資 そのメリットとデメリット




 設備投資をしなければ、売上が増えない企業の場合、設備投資を前提にして、市場の拡大に対応しなければなりません。

 市場の拡大が見込まれても、設備投資ができない企業は、シェアは低下して、市場から退出してしまうでしょう。

 半導体市況が悪いとき、韓国の三星電子や台湾のTSMCが積極的に投資を行ったことで、業界の勢力地図は大きく変わりました。

 半導体や液晶では、日本勢のシェアは激減し、アジア勢のシェアが激増してしまいました。


 三星電子のように効率の高いよいタイミングで設備投資をすると、売上増に結びつき、利益が増えるというシナリオが描きやすいのです。

 しかし、日本の総合電機のように、業界が横並びで、みんな一斉に投資をすると、業界としては生産能力過剰となり、期待した収益が上げられなくなります。


 設備投資をすれば、従業員のやる気は落ちないで、元気になるといった効用もあります。また、技術レベルが高い場合は、他社への委託をやめて内作にすることで、技術の流出も防げます。
 しかし、日本の総合電機は、台湾や韓国に積極的に技術を供与して、安く作らせることを優先させてしまったため、肝心のノウハウが委託先に流出してしまいました。


 一方で、設備投資は、借り入れの場合は、財務内容を悪化させますし、エクイティファイナンスをすれば、株数を増加させ、1株当たりの利益を薄めるという結果になります。


設備投資の利点と欠点:
○ 売上増加や収益増加につながる
○ 自社製造にこだわれば、請負業者への技術流出を防ぐことができる
○ 設備投資はプロジェクトであり、基本的に楽しいものだ。従業員や研究員のやる気が上がる
× 供給過剰で減益となるリスク
× 借入でまかなうと財務内容が悪化してしまう
× 公募増資などのエクイティファイナンスで株数が増加して希薄化が生じる


■設備投資の評価■

 設備投資の効率を比較することで、企業の収益力を計ることができます。
収益力とは、差別化や競争力の反映です。
また、収益の見通しは、株価には重要な要素です。
需要が見込まれるとき、設備投資の効率が高ければ、収益の拡大に結びつきます。


■リスクの多様性とリスクの評価■

 設備投資の効率が高いところは、リスクも小さい。
しかし、設備投資の効率が高いところは、みながやりたがる事業でしょうから、新規の参入のリスクが高いといえます。

リターンはリスクの裏返しです。リターンが高いと、それに見合ったリスクが発生します。
リスクは多数の種類があります。
たとえば、投資効率を優先させると、利益率は確保できます。一方で、そのような事業の機会は少ないため、売上の増加を犠牲にすることになります。
シェア拡大を諦めるわけですから、シェア低下のリスクを犯していることになります。


 投資効率が高いということは、利益率が高いということであり、顧客から見れば、値段が高いということになります。
顧客は、高い値段のものを、代替できないか、そういうチャンスを常々狙っています。
日本企業の製品は高いから、安い中国製に切り替える。
純正品は高いから、模倣品に切り替える。
そういうリスクを代替リスクと呼びます。


投資効率を高めると、リスクが発生します。
1)リスク 売上成長力を犠牲(シェアが低下するリスク)
2)リスク 製品が代替されるリスク
3)リスク 新規参入のリスク
ということになります。


 逆に、投資効率がよくないものを敢行してしまうとどうなるでしょうか。
供給過剰になれば、価格下落のリスクで、事業が赤字になるリスクを負うことになります。
撤退の障壁が生じてしまう。


■投資家としてのチェック・ポイント■

 投資効率がよい。定義は、たとえば、「投資のリターンが10%以上ある」と定義するのはどうでしょうか。

たとえば、聖書はどうでしょうか。ビジネスとしてみるのは不遜かもしれませんが、聖書の値段は大きさにもよりますが、買うと3000円程度します。

 1000冊刷っても、500冊刷っても、印刷コストはあまり変わりません。
版のコストが高いからです。
印刷コストは2000部で80万円程度としましょう。

編集コストが低く、著作権が消滅しています。
つまり、固定費が80万円。
変動コストは、インターネットでの直販にすれば、HPがすでにある場合、物流と梱包のコストだけになります。
在庫保管が自宅の押し入れでよければ、コストはかかりません。。
宛名書きは結構大変そうですね。

流通コストは、一冊あたり400円程度でしょうか。
送料を顧客に負担していただくと、聖書のビジネスは、限界利益率が100%となります。

ブレイク・イーブンは、267冊。
一生かけて、販売できます。
100年間で、2000冊売り切るとしましょう。
年間20冊のペースです。

総収入は600万円。
コストは80万円。
今後100年間のリターンは、年率で2%となります。
複雑になりますので、金利の前提はゼロとおきました。


ビジネスモデルとしては、どうでしょうか。

●限界利益率は高い。変動費ゼロ。
●100年後も売れる内容である。
●初期投資が大きい。80万円もかかります。
●回収期間が長い。13年かかります。


すべての事業は、上記のような計算が成り立ちます。
どんな事業も、事業計画を立てることができます。
どんな事業でも、投資効率を計算することができます。

 しかし、その前提条件をちょっといじるだけで、投資効率は、大きく変わります。そこが欠点です。


ビジネスモデルとは、限界利益率を何%に設定するかということです。
上記のケースでは、限界利益率を87%に設定することで、郵送無料のビジネスとなります。
顧客負担が軽くなるため、販売部数はそうしなかった場合に比べて増加するでしょう。
しかし、利益が犠牲になります。
総売上が減ります。


上記と同じだけの投資効率を実現するためには、100年かけて売っていては駄目です。
92.9年以内で売り切ることができるのであれば、送料を負担した方がよいということがわかります。

いや、10年で2000部ぐらい売れるだろうという方がいたら、すごいですね。

投資利回りは20%を超えてきます。
いや、自分なら1年で2000冊ぐらい売れそうだという方、天才ですね。
投資利回りは750%。

80万の投資で600万のリターン。


100年間安泰なビジネスを組み、1年で回収。これがビジネスとしては最高なんですけどね。
ゆっくりと100年かけて売るようなシステムをつくるのが経営者の仕事かもしれませんね。


山本 潤
スロー・インベストメント
〜ゆっくり考え ゆったり投資〜


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投資アイデアの創出その9 予想通りに、売上が伸びるかどうか?




■投資アイデアの生成の過程についての連載を続けています■


(前号まで)
●売上の変化、シェア(=市場占有率)の変化、コスト構造の変化などを軸に投資案件を評価しましょう。

●売上の伸びる、シェアが維持できる、コストダウンの見通しがついている。


こういうケースが株が人気化するパターンです。


(今回のテーマ)

●テーマ●予想通りに、売上が伸びるかどうか?


 ある企業の将来の売上が伸びると予想します。でも、本当に、期待通りに将来の売上げが伸びるでしょうか?
予想が当たる確率を高めるためには、どうしたらよいでしょうか?


1)市場を創出した企業を探す

 自らの努力で、市場を創出した企業。
たとえば、MP3プレイヤーなどのアイ・リバーシリーズは、大手の家電メーカーより高いシェアを取りました。
グローバルニッチが経営戦略となっている日東電工は、多くの分野でシェア1位を誇っています。
このように自らが市場を創出している企業は、圧倒的なシェアを取っているため、その市場が拡大すれば恩恵を受けることになります。


2)シェアの高い企業

 伸びる分野において、シェアが高い企業。その属する市場が伸びるのであれば、その企業が恩恵を受ける確率は高いでしょう。


■伸びる企業を当てる確率を高めるときの問題点と解決策■


●4−5年先の近未来を予想する

 伸びるのが誰にもわかる場合、市場参加者が安易に将来を予想できるため、株価はすぐに織り込んでしまう場合があります。
ただ、株価というものは、長くて2−3年先までしか織り込めません。
4−5年先までの拡大が読める場合は、リスクをとって、購入に踏み切ってみるべきでしょう。
投資のリターンは、遠い未来になればなるほど、大きくなります。同時にリスク、つまり見込みが違ってしまう確率も高くなります。


●数ヶ月先を読む。相場のあやをとる。トレーディングのアイデア。
 トレーディングとは、レンジの中で、売ったり買ったりする行為です。月次の売上に一喜一憂する投資家の数がかなりを占めます。
株式市場では、短期投資家の数が多いため、四半期の決算や月次の売上結果などで、株価が影響を受けます。
長期投資家を目指す方は、このようなトレーディングのアイデアは、学ぶ必要がないでしょう。


●4−5年先の未来を予想する場合の事例

☆日東電工(6988)

 液晶テレビは、今後5年は伸びつづけるでしょう。(市場が伸びる)
日東電工の大型液晶向け、テレビ向けのフィルムのシェアは高い。(シェアが高く競争力がある。伸びる確率が高い)

☆有沢製作所(5208)
 今年の三星電子とLGの携帯電話の出荷はそれぞれ25%と45%程度伸びるだろう。なぜなら、カメラ付きで安価なモデルを出しているから。
2004年ですでに世界のカメラ付き携帯電話は6000万台に達する。韓国勢が大きくシェアを伸ばしている。
中国は2005年(1250万台)から2006年(3500万台)にかけてカメラ携帯が大きく伸びる。(2003年は120万台、2004年は800万台予想)。

 フレキ基盤は、カメラ付きになると、大きく伸びるといわれる。
有沢のFPC材料の韓国シェアは70%を超えている。(伸びる確率が高い)

次号は、売上が伸びれば、利益が伸びるかという問題を取り上げます。


(つづく)


山本 潤
スロー・インベストメント2004
〜ゆっくり考え ゆったり投資〜

このコンテンツは、特定の銘柄を推奨するものではありません。アイデアというものは、単なる思い付きの部分も多く、投資判断を導くには未成熟・不十分・不正確なものです。ここで紹介しているようなレベルのアイデアでは、投資の役には立ちません。内容についても、関係者との立ち話が中心なので、わたしの取り間違いや聞き違いも含まれているかもしれません。内容の正確さを保証するものではありません。


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投資アイデアの創出その8 アイデアを出す際の原則を決めてみる




■ 株式投資のアイデアの生成過程についての連載を続けています ■


 闇雲にアイデアを出すよりも、まず、アイデアを出す際の原則を決めてみることです。

 「アイデアの筋」なるものを前号で紹介しました

 アイデアの筋とは、アイデアの分類ということでした。


ステップ1) アイデアのA分類)
市場や産業の動向。拡大する市場や産業はどこ?という原則。つまり、伸びる市場はどこなの?なにが伸びるの?といこと。

ステップ2) アイデアのB分類)
産業間や市場間の闘いや産業内や市場内の闘いの趨勢はどうなるの?という原則。対象企業の市場占有率はどうなるの? どの企業のシェアが上がるの?という問題。

ステップ3) アイデアのC分類)
対象企業のコストダウン余地は?付加価値をどう価格に反映できるか?というコスト競争力やテクノロジーのロードマップに関するもの。
対象企業のコスト競争力やテクノロジーの高さを評価しましょうという問題。


この3つのステップは、言い換えると、以下のとおりです。

ステップ1) 伸びる市場を見つけて、
ステップ2) 今後強くなる企業を見つけて、
ステップ3) 実際にコスト計算や収益予想をしてみよう。


■相互に関連する投資アイデア■

 とはいえ、この3つのアイデアの分類ですが、相互に関連しています。
ステップ1)で市場が伸びるという前提の場合、当然、量産効果が期待できます。量産効果を測定して、ステップ3)のコストダウンの余地がある程度、計算できます。ステップ2)のシェアの推定については、生産能力や企業の性格から、行います。すると、伸びる市場にある企業が、積極的に圧倒的な設備投
資をして、他社を萎縮されるなら、そのときは、投資で圧倒する企業が、量産効果を独り占めにしてしまうわけです。いってみれば、鶏が先か、卵が先かの議論と同様です。


■A分類、B分類、C分類の重なる部分について■

 A分類だけの企業であれば、伸びている業界に属しているが、参入企業が多すぎる場合ですね。かつてのHDD業界やPC業界でしょうか。模倣タイプ。(15%)

 B分類だけの企業であれば、成熟産業で、シェアを今後伸ばしていく企業(M&Aなど)が該当するでしょう。成熟業界のトップ企業タイプ。(15%)

 C分類だけの企業では、シェアも下位だが、技術的なロードマップがしっかり見通せる企業でしょうか。DRAM業界なんかは当てはまるでしょうか。代替脅威のタイプ。(15%)

 A∩Bの集合では、伸びそうな業界でシェアも高くなりそうな企業が当てはまりますが、採算面での確信が得られない場合が該当するでしょうか。ハイエンド市場ですね。(5%)

 A∩Cの集合では、伸びそうな業界で、コストの見通しがついている企業群が当てはまるでしょうか。コンデンサや半導体が当てはまるでしょうか。(5%)

 B∩Cの集合では、成熟業界ではあるけど、革新的な工法や中抜きによって、コストを下げ、シェアを上げていく企業群が当てはまるでしょうか。(5%)

 A∩B∩Cの集合では、成長産業でシェアが伸び、コストダウンの道筋もつくという企業群になりますでしょうか。(上位5%)

 どれにも当てはまらない企業は、負け組で倒産まっしぐら企業でしょうか。(35%)


■アナリストの質問■

 アナリストとしては、3つのステップを押さえるために、このような質問を企業側にします。

●市場の規模はどの程度でしょうか。
●市場の成長性をどうみますか。
●御社のこの事業だけの売上げや収益を教えてください。
●シェアはどう見ていますか。御社のシェアは何%ですか。
●ライバルはどこでしょうか。
●代替の脅威は何でしょうか。
●能力の増強の歴史や今後の能力増強の予定と設備投資の歴史と今後の設備投資の予定。


 この7つから、市場規模や成長性がわかり、各企業のシェアがわかり、市場間の競争(代替)が理解でき、その事業が儲かる事業か儲からない事業か、そして、設備投資の効率(いくら投資をすればいくら売上が増えるか)がわかります。


(つづく)

山本 潤
スロー・インベストメント2004
〜ゆっくり考え ゆったり投資〜

このコンテンツは、特定の銘柄を推奨するものではありません。アイデアというものは、単なる思い付きの部分も多く、投資判断を導くには未成熟・不十分・不正確なものです。ここで紹介しているようなレベルのアイデアでは、投資の役には立ちません。内容についても、関係者との立ち話が中心なので、わたしの取り間違いや聞き違いも含まれているかもしれません。内容の正確さを保証するものではありません。


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