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バラマキ政策

安部総理の辞任で政局が流動化しました。
後継には福田さんが有力のようです。

民主党など野党が先の参議院選挙で過半数を押さえました。
自民党は民主党と政策上も妥協を余儀なくされそうです。

ここにきて、「格差社会の是正」という大義名分の下、旧来の派閥政治および官僚政治の復活や公共事業の上積みが危惧される事態に陥っています。

わたしたち、市場にかかわる者は、政府の改革路線を概ね支持してきました。
改革を推し進めて、個人の努力の成果をマーケットに委ねる方が、あてもないバラマキよりは効率的だからです。

たとえば、民主党は、農家に一律お金をばらまくという政策を提唱しています。
これは、市場関係者から見れば、最悪の政策です。
単に、人気取り、ポピュリズムです。

以前、「ふるさとの創生」という謳い文句で、竹下総理の時代に、各自治体に1億円を一律でばら撒かれました。
まったく愚かな政策でした。
日本中であきれ返る「プロジェクト」が本当に実行され、失笑を買ったのは記憶に新しいところです。
たとえば、1億円の金塊を村が購入し、それを陳列するというプロジェクトもありました。
1億円で温泉を掘ったのはよいが、サポートやメンテにお金がかかることを知らなかったようなプロジェクトもありました。
1億円投資して、回収見込みはゼロ。
そればかりか、次年度以降にサポートやメンテで何千万も赤字を垂れ流す、という民間では考えられない不良プロジェクトが多発したのです。

市場関係者であれば、多くの政策の中から、

1)その事業の意義、
2)ROIの高さ、
3)予想利益の確度

などを議論し、最も優れたプロジェクトに投資をするでしょう。

しかし、政治では、一人一票とはいうものの、法の下の平等が成り立っていない状況を放置して、地方と都会とを比べれば、明らかに田舎の人の一票が重くなっています。

田舎重視の政治家が多数を占める日本では、地方にお金をばらまくことが、票に直結してきたのではないでしょうか。

バラマキ・プロジェクトのROIは明らかにマイナスです。
バラマキは、生活資金に消えてしまいます。
投資としては、最悪なのです。

このようなバラマキ政策を民主党が政権ほしさに採ることは、非常に残念であります。


■格差社会

「魚をあげるのではなく、魚の釣り方を教えるほうが、その人のためになる」
といいます。

地方において、格差を実感している人にとって、格差を埋める手段は、事業を行ううえでの「とっておきのノウハウ」ではないでしょうか。

ネットが急速に普及した今、地方にあっても、評判のよい商品を提供している業者は口コミで急速に認められる時代です。
辛らつですが、口コミもたたないようなビジネスしかできないのが地方の置かれている厳しい状況なのでしょう。

格差社会は、結果の不平等です。
この結果の不平等は、改革の影といわれているようです。

本当にそうでしょうか。
改革をしなければ、日本全体が閉塞感の中で、いつまでも、もがき苦しむことになります。
「なお、一層の改革を地方に推し進めなければならない」というのが市場関係者の主流な意見です。

改革を推し進めたから不平等がおきたという主張は、
「成功して金持ちが多数出現したので格差がおきた」といっているように聞こえます。
田舎の公共工事という究極のバラマキ・プロジェクトは、明らかにROIがマイナスです。
プロジェクトベースで、ROIの高いものにシフトできないのは、規制緩和を怠ってきた政治のリーダーシップの欠如です。

金持ちを貧乏人にすることで、貧乏人が金持ちになることはありません。
国家予算の60兆円を等しく1億人の国民にばらまけば、一人60万円の支給となります。
一家3人で180万円の支給です。
それらの多くは、生活費に消えてしまいます。ROIは完全なマイナスです。

しかし、60兆円をROI100%の事業に投資をすれば、毎年60兆円のリターンが得られます。
国家予算は倍々ゲームのように増えていきます。
政治家にこのような予算のコンセプトを期待するのは無理なのでしょうか。

1億人の生活費に消える予算よりは、世界を救いながらもROIも高いという1000のプロジェクトに重点配備すれば、多くの政治問題は解決するでしょう。


■石ころをゴールドに変える

半導体業界では、半導体チップのことを「石」と呼ぶことがあります。
もともと、半導体はシリコンがベースですが、シリコンは、要は、石ころです。
石ころが、多結晶シリコンになり、単結晶シリコンになり、半導体ウェハーとなり、半導体チップとなります。
その過程で、付加価値が数百倍になります。

「石」は、「金」よりも高価なものに生まれ変わることができるのです。

一方で、日本の一次産業は、「市場のちから」をまったく利用しようとしていません。
スーパーで一匹数十円で売られているサンマを近海で採っていても、付加価値はとれません。
市場で安く取引されている魚はえさにし、市場で高く取引されているぶりなどの高級魚を養殖するしか付加価値をあげる方法はありません。
安価なえさで大規模に高級魚を養殖するというプロジェクトは日本において行われているのでしょうか。
漁協が細分化し、近海の権益調整もままならないようでは、石を金に変えることは無理です。

石を金に変えることを考えなければなりません。

農業では、何が世界市場でもっとも高く売れており、それらの高値の理由、そして、高値がどこまで続くかという読みが重要です。
今の農家では、世界の農産物で何が一番高い値段で売れているかトップ10を、すらすらといえる農家は少ないのではないでしょうか。

市場で高く売れるものを売ろうとする努力は、短期的な取り組みでは実現できません。
10年単位で取り組む必要があります。

農家は、リスクマネーを呼び込むことに取り組まなければならないのです。
リスクマネーを呼び込むためには、どうしたらよいのか、規制を緩和しなければならないのか、それとも、技術力を磨かなければならないのか、答えはひとつではないでしょう。
そういうことを考えなければならないのです。

いずれにしても、バラマキ政策の拡大や公共工事の復活は、格差社会の是正には全く役立ちません。
そればかりか、精神的に地方の有能な経営者までも他力本願にしてしまうのではないでしょうか。

それは、このコラムで繰り返し主張してきた、自立する投資家のコンセプトとは相容れません。


■変わらぬメッセージ:長期の読者に感謝■

99年に始まった億の近道は、16000人程度の読者で成り立っています。
長期間購読を続けていただいた読者が多い、古い読者が多いことが特徴です。

このメルマガ(火曜日版)では、多くの株式投資メルマガにあるようなことは
行いません。
つまり以下のことはやりません。

●手っ取り早い情報(証券会社の格付けの変更など)
●何を買うべきか
●投資指南
●お勧め銘柄
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わたしたちは「タダなのにすごいことが書いてある」メルマガを志向しません。
また、編集に時間をかけることもできません。

わたしたちが伝えたいことは、

●日本が欧米に並ぶ金融大国になるために日本人がもっと学ぶべきこと
●若い世代がワーキングプアにならないためにすべきこと
●株式市場は手っ取り早く儲けようとする投資家を貧乏にするという教え
●株式市場はゆっくり考え賢明に投資するものに富をもたらすという教え
などです。

いわば投資の実務家としての哲学や歴史観・人生観です。

わたしたちが目指すのは、「ファンダメンタル分析」宗教の普及です。

<著者紹介>

億の近道に2000年3月に執筆を開始。
およそ7年間 毎週執筆してきました。
継続は力です!
昨年、念願の独立を果たす。
日本株ロングショートのヘッジファンドマネージャー。

(職歴)
1990−1997年
 和光証券国際本部
(1990−1992年日本興業銀行外国為替部および国際資金部へ出向)
1997年−2005年
 米系投資顧問クレイ フィンレイ インク ポートフォーリオマネージャー。
2006年1月より独立起業。
 エイム インベストメントでファンドマネージャー。
(学歴)
コロンビア大学院 電気工学科 工学修士。
(六本木裏通りの人生大学 夜間部卒。専攻は夜間泥酔行動経済学)
(主な著書)
 「インベストメント―米系バイサイド・アナリストの投資哲学と投資技法」
(2001年イーフロンティア)
 「投資家から「自立する」投資家へ」(2003年パンローリング)
 「マンガ ファンダメンタルズ分析 入門の入門」(2004年パンローリ
 ング)

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〜Slow Investment ゆっくり考え ゆったり投資 〜
山本 潤

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)

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