本日の伝説の投資家John Paulson(ジョン・ポールソン)は55歳で、ヘッジファンドの第1世代とされ、このコラムでも既に紹介した、George Soros(ジョージ・ソロス)やJulian Robertson(ジュリアン・ロバートソン)とはちょうど1世代違います。
ポールソンの経歴はまさにビジネスエリートの典型です。ニューヨーク大学で金融の学位を得た後、ハーバード・ビジネススクールに進学し、そこで世界中から集まった1学年800−900人の秀才たちの中からTop5%だけに与えられるBaker Scholar(ベイカー・スカラー)を受賞します。卒業後は、経営コンサルティング会社の名門ボストン・コンサルティングに就職した後に、投資ファンド黎明期の大立者Leon Levy(レオン・レビー)が創業したファンドOdyssey Partnersに就職し、その後Bear Stearnsなどを経由して、39歳で自分のヘッジファンドを創業しました。
しかしながら、彼の創業したファンドは、資金集めに苦労します。最初100万ドルを最低投資単位として資金を集めますが、誰ひとり出し手が見つからず、この投資単位を引き下げます。それでも、投資家が見つからない為、ポールソンは自己資産の200万ドル(約1.7億円)で仕方なくファンドを始めました。ようやく、ファンドを開設してから半年くらい経過した後に、約50万ドル(約4,000万円)を投資してくれる友人が見つかったようです。このファンドが僅か15年後に人類史上最大のリターンをあげ、世界最大級のファンドにまで成長すると誰が想像できたでしょうか。
このエピソードは、ヘッジファンド業界のダイナミックさを表していると共に、いずれ、ヘッジファンドを立ち上げたいと考えている私達夫婦にとって、勇気と簡単にあきらめてはいけないという心構えを教えてくれました。
ポールソンが名を上げたのは、08年の金融危機を見越した逆張り投資で莫大な収益を上げたことによります。05年頃から、住宅担保証券の格付け基準の甘さや、銀行の過剰融資により、いずれ深刻な金融危機が起きると予測し、サブプライムローンを含んだ商品のCDS(Credit Default Swap;ベースとなる金融商品がデフォルト(破綻)した時にその損失を補償するオプション)の価値が急騰すると考え、大量のCDSに投資を行います。
しかしながら、住宅バブルはなかなか弾けず、このCDSへの投資は損失を出し続け、多くの大手投資銀行からこの取引をやめるように忠告を受けます。社内でこの取引を主導した人物まで弱気に転じることもありましたが、ポールソンは米国の住宅価格の下落と共に、大量のサブプライムローンが焦げ付くと予測し、この取引をやめようとするどころか、拡大を命じます。
投資を開始してから2年以上が経過した、07年後半に、サブプライムローン問題が表面化したことで、目論見通りCDSの価値は急騰し、08年の儲けは約150億ドル(約1.3兆円)に上り、彼自身も約40億ドル(約3,400億円)の報酬を得ました。この150億ドルと言う儲けは、ファンドが1年間にあげたリターンとして、人類史上最高の金額です。
その後も、ポールソンは成功をし続けており、09年は金融機関の株式が一転して上がると的中させ、10年は金価格の上昇により巨額のリターンをあげたようです。10年のポールソンの報酬は、ファンドサイズが成長した事もあり、50億ドル(約4,100億円)以上という天文学的な金額にのぼっているようです。この金額は、約3.6万人のゴールドマン・サックス全従業員のボーナス金額の約7割に相当する金額です。多くの人から馬鹿にされながらも、自らの見立てを信じて、偉大な勝利を収めた証です。
ウォーレン・バフェットは、「潮がひいたときに、誰がちゃんと水泳パンツを履いているかがわかる」というフレーズで、危機が起きた時こそ投資家の真の実力が分かるという事実を表現したらしいですが、まさにポールソンはサブプライム危機という未曾有の暴落相場の中で、その実力を見せつけました。05年に危機を予見してから、2年以上損失を出しながらも自らの信念を貫き通したポールソンは、その偉業により伝説の投資家として永遠に語り継がれるでしょう。
S&S investments
岡村 聡
【プロフィール】
東京大学工学部卒、東京大学大学院学際情報学府卒。
卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、
バイアウトファンドのアドバンテッジパートナーズに勤務。
2010年6月より、投資アドバイス会社S&S investments起業。
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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ポールソンの経歴はまさにビジネスエリートの典型です。ニューヨーク大学で金融の学位を得た後、ハーバード・ビジネススクールに進学し、そこで世界中から集まった1学年800−900人の秀才たちの中からTop5%だけに与えられるBaker Scholar(ベイカー・スカラー)を受賞します。卒業後は、経営コンサルティング会社の名門ボストン・コンサルティングに就職した後に、投資ファンド黎明期の大立者Leon Levy(レオン・レビー)が創業したファンドOdyssey Partnersに就職し、その後Bear Stearnsなどを経由して、39歳で自分のヘッジファンドを創業しました。
しかしながら、彼の創業したファンドは、資金集めに苦労します。最初100万ドルを最低投資単位として資金を集めますが、誰ひとり出し手が見つからず、この投資単位を引き下げます。それでも、投資家が見つからない為、ポールソンは自己資産の200万ドル(約1.7億円)で仕方なくファンドを始めました。ようやく、ファンドを開設してから半年くらい経過した後に、約50万ドル(約4,000万円)を投資してくれる友人が見つかったようです。このファンドが僅か15年後に人類史上最大のリターンをあげ、世界最大級のファンドにまで成長すると誰が想像できたでしょうか。
このエピソードは、ヘッジファンド業界のダイナミックさを表していると共に、いずれ、ヘッジファンドを立ち上げたいと考えている私達夫婦にとって、勇気と簡単にあきらめてはいけないという心構えを教えてくれました。
ポールソンが名を上げたのは、08年の金融危機を見越した逆張り投資で莫大な収益を上げたことによります。05年頃から、住宅担保証券の格付け基準の甘さや、銀行の過剰融資により、いずれ深刻な金融危機が起きると予測し、サブプライムローンを含んだ商品のCDS(Credit Default Swap;ベースとなる金融商品がデフォルト(破綻)した時にその損失を補償するオプション)の価値が急騰すると考え、大量のCDSに投資を行います。
しかしながら、住宅バブルはなかなか弾けず、このCDSへの投資は損失を出し続け、多くの大手投資銀行からこの取引をやめるように忠告を受けます。社内でこの取引を主導した人物まで弱気に転じることもありましたが、ポールソンは米国の住宅価格の下落と共に、大量のサブプライムローンが焦げ付くと予測し、この取引をやめようとするどころか、拡大を命じます。
投資を開始してから2年以上が経過した、07年後半に、サブプライムローン問題が表面化したことで、目論見通りCDSの価値は急騰し、08年の儲けは約150億ドル(約1.3兆円)に上り、彼自身も約40億ドル(約3,400億円)の報酬を得ました。この150億ドルと言う儲けは、ファンドが1年間にあげたリターンとして、人類史上最高の金額です。
その後も、ポールソンは成功をし続けており、09年は金融機関の株式が一転して上がると的中させ、10年は金価格の上昇により巨額のリターンをあげたようです。10年のポールソンの報酬は、ファンドサイズが成長した事もあり、50億ドル(約4,100億円)以上という天文学的な金額にのぼっているようです。この金額は、約3.6万人のゴールドマン・サックス全従業員のボーナス金額の約7割に相当する金額です。多くの人から馬鹿にされながらも、自らの見立てを信じて、偉大な勝利を収めた証です。
ウォーレン・バフェットは、「潮がひいたときに、誰がちゃんと水泳パンツを履いているかがわかる」というフレーズで、危機が起きた時こそ投資家の真の実力が分かるという事実を表現したらしいですが、まさにポールソンはサブプライム危機という未曾有の暴落相場の中で、その実力を見せつけました。05年に危機を予見してから、2年以上損失を出しながらも自らの信念を貫き通したポールソンは、その偉業により伝説の投資家として永遠に語り継がれるでしょう。
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岡村 聡
【プロフィール】
東京大学工学部卒、東京大学大学院学際情報学府卒。
卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、
バイアウトファンドのアドバンテッジパートナーズに勤務。
2010年6月より、投資アドバイス会社S&S investments起業。
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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