小寒、大寒。寒さのトンネルが続いていますが、読者の皆さまにはお元気でお過ごしでしょうか?新年の卯年期待への盛り上がりも徐々に落ち着き、材料をしっかり吟味する時期に入ったようです。今回はインフレ懸念から利上げ期待が出てきた欧州と英国を話題にしていこうと思います。
昨年から引き続き懸念されていた欧州債務問題はユーロ諸国による安定化基金の増額の話や救済資金枠の拡大への期待、またドイツを中心とした経済指標の強さも手伝って一方的なユーロ売りから少しずつ変化の兆しが見えてきました。
中国が引き続きユーロ圏への投資を表明、また日本もユーロ圏への投資を増やす意思表明、昨日はロシアがスペイン債購入の意思を表明した事もユーロ支援材料になりました。また、先週開かれたECB(欧州中央銀行)理事会終了後のトリシエ総裁会見での「インフレ警戒感」発言はECBによる早期の利上げ期待感につながりユーロの下値は固くなりました。
ただ、一方で依然として、スペインやポルトガルを筆頭に資金繰りに関する懸念はユーロの上値を抑えてはいるのですが、新たに加わった利上げ期待とEU諸国による支援基金EFSF通貨の拡大議論、そして何と言ってもドイツをはじめとしたユーロ諸国首脳による通貨ユーロ堅持のメッセージの真意が伝わりつつあるように思います。
そのインフレ懸念。未だデフレ日本では一部コーヒー価格の上昇等はあるものの、円高の恩恵であまり話題になりませんが、ユーロ圏のみならず英国においてもインフレ懸念から利上げ期待が高まり、英ポンドは18日時点で年初来主要通貨中、対ドルで上昇率が上位(メキシコペソの3.31%に次ぐ1.77%上昇)となっています。
物価高騰になっている背景は一次産品、食料価格の上昇、原油に代表されるエネルギー価格の上昇も影響しているようです。更に、英国では今年の新年早々の1月4日からVATと呼ばれる付加価値税(日本でいう消費税)が17.5%から20%に引き上げられ、便乗値上げもあったようで価格はそれ以上に上がったものが多かったようです。
ご存知のように、英国は昨年5月に新政権が誕生して緊縮財政に取り組んでいます。補助金などの大幅なカット実施が今後も予定され、昨年も大学の授業料の値上げに反対した学生デモ隊がチャールス王子の車に物を投げつけたというセンセーショナルなニュースがメディアで流れていました。
一方で、世論の大半は現政権の緊縮財政政策を支持している調査結果があります。リーマンショック後にマーケットで英国は一時、国家財政破たんも懸念された経緯、欧州債務問題からユーロ危機につながったことへの危機感をコンセンサスに政治の強いリーダーシップが効いているのでしょう。
先日、ロンドン在勤のエコノミスト、東短リサーチの加藤出氏の講演を拝聴する機会があり大変興味深いお話しを伺いました。英国民の大方は大胆な財政再建策の方向性は支持、メディアも付加価値税の引き上げの必要性を社説で支持しており、そこには政治家が強い理念を持って政策を実行するかで国民の支持につながるかどうかがかかって来る。消費税上げを政策に掲げると選挙に敗北するという日本との対比にも触れておられました。
また、英国経済がこのところ底堅い背景に移民政策(ある一定以上の収入のある移民を受け入れる)、世界的に若年層の失業率が高い中でスキルアップのために英語を学びに来る新興国をからの留学生の増加等も国際的に様々なアドバンテージをもった英国ならではだと思います。
英国では4月にロイヤルウエデイング、来年はロンドン・オリンピックと大きな行事が続き、その経済効果も期待できるかもしれません。ウィリアム王子の人気、注目度は相当高いようで、その父上というより母上譲りのオーラがありそうです。
とは言え、緊縮財政を徹底して利上げをする事は、長い将来の財政健全性への期待はありつつも、中期的に経済成長率維持と通貨上昇は続くのだろうかと少々懸念もあります。主要国の長期金利(10年物国債)のインフレ調整後の実質金利水準を比べると、米国が1.81%、ドイツ1.33%、日本1.1%、英国は0.31%と英国の実質金利の低さが目立ち投資の魅力に問題も見えます。
年内の利上げの観測も見え隠れして金利差からのポンド買いが年初来のポンド上昇の主な背景になっています。ただ、今後本格化する緊縮財政による経済への影響と金利引き上げが悪い形で重なった場合を考えると、ポンド買いが本格化するかどうか疑問が残ります。
今年は新年早々、私が最も尊敬する元上司である英国人夫妻の来日、英国のフレッシュな話題満載の加藤氏の講演会やレポートなどで個人的には英国の話題に敏感になっています。英国に見る「政府の財政再建策の理念に国民が理解を示して行動する。」から膨大な赤字を抱える国の国民として、政治や仕組みを批判する、という行動だけでは済まない日が直ぐそばに来ていると改めて思いました。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました!
(式町 みどり)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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昨年から引き続き懸念されていた欧州債務問題はユーロ諸国による安定化基金の増額の話や救済資金枠の拡大への期待、またドイツを中心とした経済指標の強さも手伝って一方的なユーロ売りから少しずつ変化の兆しが見えてきました。
中国が引き続きユーロ圏への投資を表明、また日本もユーロ圏への投資を増やす意思表明、昨日はロシアがスペイン債購入の意思を表明した事もユーロ支援材料になりました。また、先週開かれたECB(欧州中央銀行)理事会終了後のトリシエ総裁会見での「インフレ警戒感」発言はECBによる早期の利上げ期待感につながりユーロの下値は固くなりました。
ただ、一方で依然として、スペインやポルトガルを筆頭に資金繰りに関する懸念はユーロの上値を抑えてはいるのですが、新たに加わった利上げ期待とEU諸国による支援基金EFSF通貨の拡大議論、そして何と言ってもドイツをはじめとしたユーロ諸国首脳による通貨ユーロ堅持のメッセージの真意が伝わりつつあるように思います。
そのインフレ懸念。未だデフレ日本では一部コーヒー価格の上昇等はあるものの、円高の恩恵であまり話題になりませんが、ユーロ圏のみならず英国においてもインフレ懸念から利上げ期待が高まり、英ポンドは18日時点で年初来主要通貨中、対ドルで上昇率が上位(メキシコペソの3.31%に次ぐ1.77%上昇)となっています。
物価高騰になっている背景は一次産品、食料価格の上昇、原油に代表されるエネルギー価格の上昇も影響しているようです。更に、英国では今年の新年早々の1月4日からVATと呼ばれる付加価値税(日本でいう消費税)が17.5%から20%に引き上げられ、便乗値上げもあったようで価格はそれ以上に上がったものが多かったようです。
ご存知のように、英国は昨年5月に新政権が誕生して緊縮財政に取り組んでいます。補助金などの大幅なカット実施が今後も予定され、昨年も大学の授業料の値上げに反対した学生デモ隊がチャールス王子の車に物を投げつけたというセンセーショナルなニュースがメディアで流れていました。
一方で、世論の大半は現政権の緊縮財政政策を支持している調査結果があります。リーマンショック後にマーケットで英国は一時、国家財政破たんも懸念された経緯、欧州債務問題からユーロ危機につながったことへの危機感をコンセンサスに政治の強いリーダーシップが効いているのでしょう。
先日、ロンドン在勤のエコノミスト、東短リサーチの加藤出氏の講演を拝聴する機会があり大変興味深いお話しを伺いました。英国民の大方は大胆な財政再建策の方向性は支持、メディアも付加価値税の引き上げの必要性を社説で支持しており、そこには政治家が強い理念を持って政策を実行するかで国民の支持につながるかどうかがかかって来る。消費税上げを政策に掲げると選挙に敗北するという日本との対比にも触れておられました。
また、英国経済がこのところ底堅い背景に移民政策(ある一定以上の収入のある移民を受け入れる)、世界的に若年層の失業率が高い中でスキルアップのために英語を学びに来る新興国をからの留学生の増加等も国際的に様々なアドバンテージをもった英国ならではだと思います。
英国では4月にロイヤルウエデイング、来年はロンドン・オリンピックと大きな行事が続き、その経済効果も期待できるかもしれません。ウィリアム王子の人気、注目度は相当高いようで、その父上というより母上譲りのオーラがありそうです。
とは言え、緊縮財政を徹底して利上げをする事は、長い将来の財政健全性への期待はありつつも、中期的に経済成長率維持と通貨上昇は続くのだろうかと少々懸念もあります。主要国の長期金利(10年物国債)のインフレ調整後の実質金利水準を比べると、米国が1.81%、ドイツ1.33%、日本1.1%、英国は0.31%と英国の実質金利の低さが目立ち投資の魅力に問題も見えます。
年内の利上げの観測も見え隠れして金利差からのポンド買いが年初来のポンド上昇の主な背景になっています。ただ、今後本格化する緊縮財政による経済への影響と金利引き上げが悪い形で重なった場合を考えると、ポンド買いが本格化するかどうか疑問が残ります。
今年は新年早々、私が最も尊敬する元上司である英国人夫妻の来日、英国のフレッシュな話題満載の加藤氏の講演会やレポートなどで個人的には英国の話題に敏感になっています。英国に見る「政府の財政再建策の理念に国民が理解を示して行動する。」から膨大な赤字を抱える国の国民として、政治や仕組みを批判する、という行動だけでは済まない日が直ぐそばに来ていると改めて思いました。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました!
(式町 みどり)
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