伝説の投資家シリーズ第5弾は、90年代の後半に自ら創業したヘッジファンドTiger Management(タイガー・マネジメント)を、史上最大級の運用資産約210億ドル(約1.8兆円)にまで成長させたJulian Robertson(ジュリアン・ロバートソン)です。ロバートソンは、以前に紹介したGeorge Soros(ジョージ・ソロス)と、こちらは未紹介ですがMichael Steinhardt(マイケル・スタインハート)と合わせて、ヘッジファンドの草創期の三巨頭と呼ばれています。
いずれも、70〜80年代初頭にヘッジファンドを創設し、爆発的な成功を収めたヘッジファンドマネージャーです。ロバートソンは、名門投資銀行Kidder Peabody(キダー・ピーボディ)で20年以上働いた後に、投資銀行でのサラリーマン生活に疲れたとして、ニュージーランドに行き休暇を取ります。そこで、じっくりと今後の自分の人生について考えたロバートソンは、組織で働くことではなく、自らヘッジファンドを作り、自分のパフォーマンスのみによって評価されることが最も自分がやりたいことだと考えます。余談ですが、この経緯は同じ決断をした私達にとって、非常に良く分かるものです。
80年にウォール街に戻ったロバートソンは、48歳とヘッジファンドの世界ではかなり遅いスタートを切ります。自己資金800万ドル(約7.2億円)でスタートしたタイガー・マネジメントは、ファンドを解散した00年には上記のように220億ドル(約2兆円)にまで成長しました。新規投入資金によるファンド規模の増加や様々な諸経費を除いた後のタイガー・マネジメントの平均リターンは約32%で、ファンド創設時に1ドル投資しておけば20年後には250ドルになっているという素晴らしいパフォーマンスでした。
00年のITバブルの頂点のときに、ロバートソンが得意とした、割安株を丹念に探し出して値上がりを待つバリュースタイルの投資は古いと、多くの投資家に見限られ、タイガー・マネジメントは解散することになりました。皮肉であるのは、タイガー・マネジメントの解散直後に、ITバブルは崩壊し、ほとんどのIT銘柄が何十分の一に暴落したことです。タイガー解散の引き金となった投資家達の多くは、大きな損失を出しました。
一方、ロバートソンは、タイガーの解散後も、オフィスやシステムを弟子たちに引き継いでファンドの創設を助け、さらには自己資金を投入することで、後進の指導を積極的に行っています。また、自己資金による投資も継続しており、直近では、サブプライムローンの崩壊も的確に予測し、03年には約3億ドル(約250億円)だった彼の自己資産は09年の段階で約22億ドル(約1,800億円)にまで増えているようです。このロバートソンの弟子達のファンドは多くが成功をおさめており、この点でもロバートソンの偉大さが再評価されています。残念ながら、ロバートソン本人は、タイガーの解散の時のゴタゴタに辟易して、他人の資産を運用するつもりは全くないようです。
ロバートソンは投資家だけではなく、趣味の世界でも、グローバルに知られる存在です。彼は休暇を過ごしたニュージーランドを気に入り、現地にゴルフコースとワイナリーを作りました。Kauri Cliffs(カウリ・クリフズ)とCape Kidnappers(ケープ・キッドナッパーズ)という2つのゴルフコースは、世界的な評価を受け、ゴルフ界のミシュランと呼ばれる、Golf Magazineの世界名コース100選にも選ばれています。特に、ケープ・キッドナッパーズは、ゴルフ場から見える全ての景色をコントロールしたいというロバートソンの理想を体現するために半島のほとんどを買取り、敷地に入ってからクラブハウスまで車で30分近くかかるという巨大な規模らしいです。いつの日か訪ねてプレイしたいと夢見ています。そして、ロバートソンの80歳近くになっても投資で勝ち続ける手腕と胆力、巨大なスケールの趣味は、私達にとって憧れです。
S&S investments
岡村 聡
【プロフィール】
東京大学工学部卒、東京大学大学院学際情報学府卒。
卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、
バイアウトファンドのアドバンテッジパートナーズに勤務。
2010年6月より、投資アドバイス会社S&S investments起業。
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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いずれも、70〜80年代初頭にヘッジファンドを創設し、爆発的な成功を収めたヘッジファンドマネージャーです。ロバートソンは、名門投資銀行Kidder Peabody(キダー・ピーボディ)で20年以上働いた後に、投資銀行でのサラリーマン生活に疲れたとして、ニュージーランドに行き休暇を取ります。そこで、じっくりと今後の自分の人生について考えたロバートソンは、組織で働くことではなく、自らヘッジファンドを作り、自分のパフォーマンスのみによって評価されることが最も自分がやりたいことだと考えます。余談ですが、この経緯は同じ決断をした私達にとって、非常に良く分かるものです。
80年にウォール街に戻ったロバートソンは、48歳とヘッジファンドの世界ではかなり遅いスタートを切ります。自己資金800万ドル(約7.2億円)でスタートしたタイガー・マネジメントは、ファンドを解散した00年には上記のように220億ドル(約2兆円)にまで成長しました。新規投入資金によるファンド規模の増加や様々な諸経費を除いた後のタイガー・マネジメントの平均リターンは約32%で、ファンド創設時に1ドル投資しておけば20年後には250ドルになっているという素晴らしいパフォーマンスでした。
00年のITバブルの頂点のときに、ロバートソンが得意とした、割安株を丹念に探し出して値上がりを待つバリュースタイルの投資は古いと、多くの投資家に見限られ、タイガー・マネジメントは解散することになりました。皮肉であるのは、タイガー・マネジメントの解散直後に、ITバブルは崩壊し、ほとんどのIT銘柄が何十分の一に暴落したことです。タイガー解散の引き金となった投資家達の多くは、大きな損失を出しました。
一方、ロバートソンは、タイガーの解散後も、オフィスやシステムを弟子たちに引き継いでファンドの創設を助け、さらには自己資金を投入することで、後進の指導を積極的に行っています。また、自己資金による投資も継続しており、直近では、サブプライムローンの崩壊も的確に予測し、03年には約3億ドル(約250億円)だった彼の自己資産は09年の段階で約22億ドル(約1,800億円)にまで増えているようです。このロバートソンの弟子達のファンドは多くが成功をおさめており、この点でもロバートソンの偉大さが再評価されています。残念ながら、ロバートソン本人は、タイガーの解散の時のゴタゴタに辟易して、他人の資産を運用するつもりは全くないようです。
ロバートソンは投資家だけではなく、趣味の世界でも、グローバルに知られる存在です。彼は休暇を過ごしたニュージーランドを気に入り、現地にゴルフコースとワイナリーを作りました。Kauri Cliffs(カウリ・クリフズ)とCape Kidnappers(ケープ・キッドナッパーズ)という2つのゴルフコースは、世界的な評価を受け、ゴルフ界のミシュランと呼ばれる、Golf Magazineの世界名コース100選にも選ばれています。特に、ケープ・キッドナッパーズは、ゴルフ場から見える全ての景色をコントロールしたいというロバートソンの理想を体現するために半島のほとんどを買取り、敷地に入ってからクラブハウスまで車で30分近くかかるという巨大な規模らしいです。いつの日か訪ねてプレイしたいと夢見ています。そして、ロバートソンの80歳近くになっても投資で勝ち続ける手腕と胆力、巨大なスケールの趣味は、私達にとって憧れです。
S&S investments
岡村 聡
【プロフィール】
東京大学工学部卒、東京大学大学院学際情報学府卒。
卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、
バイアウトファンドのアドバンテッジパートナーズに勤務。
2010年6月より、投資アドバイス会社S&S investments起業。
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