四季報の"裏"を知れば投資がもっと楽しくなります!




 こんにちは。ガチャと申します。
 「億の近道」に執筆させていただくのは今回が初めてとなります。

 昨年12月に「会社四季報(以下、四季報)」について講演させていただきまして(ご参加いただいた皆様には深く感謝申し上げます)、3月15日に第2回を開催させていただくことになり、そのご紹介も兼ねて執筆させていただきました。

 第2回詳細 ⇒ http://okuchika.net/?eid=8764


 まず、簡単に自己紹介をいたします。
 端的に申し上げますと、四季報を発行する東洋経済新報社で記者として働いており、会社四季報の執筆も担当しておりました。在籍期間は3〜7年(匿名なので幅をもたせています!)。四季報で800記事ほどを書いてきたことになります。
 今は東洋経済を離れ、機関投資家向けのリサーチ会社で働いております。


■四季報イコールよく分からない雑誌?

 四季報記者を始めてから今に至るまで、投資家の方に「四季報を書いています/書いていました」と話すと非常に興味を抱かれます。
 「なぜこんなに関心を引くのだろう」と長らく不思議に思っていましたが、最近になってだんだん分かってきました。その答えは「四季報のことがよく分からないから」でした。

 時に投資家のバイブルとも言われ、市場にも少なからずの影響を与える四季報ですが、その裏側はミステリーに満ちています。
 どのような人が執筆しているのか、いつ、どの様に取材・分析しているのか、どのような編集体制でチェックしているのか、などなど、基本的なことでさえも意外と知られていないことが多いのが四季報という媒体です。

 もちろんそれらの中には「秘伝のタレ」として企業秘密の部分はあります。
 が、それを差し引いても四季報について知られていないことが多く、そのことが読者のより良い四季報ライフ・投資ライフを阻害しているのではないかと考えております。それらの障害を取り除き、四季報の中にある情報をより引き出して貰うことが、私が四季報について活動を行う理由の一つです。


■パターンで読み解く四季報:いくつかの「お約束」を知る

 さて、ここで土産話代わりに、四季報について基本的な、けれど重要なポイントを皆様にお伝えしようと思います。

 四季報には19文字×9行の記事欄が存在します。
 そのうち前半を「業績欄」、後半を「材料欄」と言います。
 今回はそのうちの「業績欄」のお話です。

 業績欄に使える文字数は100文字足らず。その枠でその会社の業績動向を伝えきるのは大変です。規定の文字数から多すぎても少なすぎてもダメで、わずか1文字の文字余りに泣くことも多々あります。
 限られた枠に言いたいことを収めきるために、記者はあの手この手で無駄を削ぎ落としてコンパクトにします。

 自由度が高くないということは、パターンがあるということです。
 四季報の文体はいくつかのパターンに分類できます(もちろん例外は常にありますが)。
 私は企業を分析・取材した上で、その企業を表現するのに最も適したパターンに当てはめる、というやり方で執筆していました。

 四季報のパターン化は会社で教わったものではなく、私が独自に発見・分類してきたものですが、他の記者に聞いたところ、誰でも多かれ少なかれパターン化は行っているようです。


 例題に入ってみましょう。

 今回は、

【好 調】柱の四季報は「四季報オンライン」の伸長とデータ販売客数増で拡大。週刊東洋経済底打ち。採用積極化に伴う人件費増こなし営業増益。21年9月期は「四季報オンライン」の成長により営業増益続く。

という記事を例に説明します。
(記事の中身自体はテキトーなのでご注意下さい!)。

 これは最もオーソドックスな増益企業で使われるパターンで、私もよくお世話になっていました。


 この記事は大きく分けて、

 1)増益要因その1
 2)増益要因その2
 3)減益要因その1(けれど大勢に影響なし)
 4)今期は営業増益=結論その1
 5)来期の増益要因
 6)来期は営業増益=結論その2

といった構成になっています。

 さらにざっくり分けると、「結論」と「その要因」です。
 この場合の「結論」は、4行目及び最終行にある「営業増益」です。
 なぜ営業増益が結論なのかというと、四季報は営業利益を重視しており、基本的に営業利益の増減で会社の好調・不調を判断しているからです。

 この点を押さえるだけでも、グッと四季報を読みやすくなると思います。

 結論が営業増益なら、他の記述は何を示しているか。
 それは、その結論に至った要因です。
 例題のケースでは「四季報事業の拡大」と「週刊東洋経済の底打ち(おそらくは前期は業績が悪化していたのでしょう)」の二つが理由として書かれていますね。

 また、たとえ増益の会社でも良いことばかりとは限りません。
 その場合は「増益要因が」「現役要因をカバーし」「営業増益」と記述することが多いです。
 例題を見ると、「人件費増をこなし」と経費増が減益要因になっていること、それによる減益を増益が上回っていることが分かる記述になっています。

 最後に、「21年3月期は〜」と、来期予想についても一言触れています。
 これも枠組みは一緒です。
 「営業増益続く」という結論を「「四季報オンライン」の成長により」と説明しています。


 以上、代表的なパターンの説明でした。
 実際には特別損益の扱いや前号比で業績予想が変わった場合など、派生的なパターンはいくつもあります。ただ、全体としては「営業利益の増減(結論)」と「その説明」であることさえ押さえておけば大丈夫です。


 さらに一点。
 文章の枠組みをパターンとして理解したら、次は「語彙」に注目してみると良いでしょう。
 例題のケースでも、パターンを変えなくとも強い語彙を使えばだいぶ印象は変わります。

【飛 躍】柱の四季報が「四季報オンライン」の大幅拡大とデータ販売続伸で躍進。週刊東洋経済V字回復。人件費増蹴散らし大幅営業増益。21年9月期も増勢の「四季報オンライン」が業績牽引で増益基調続く。


 記者がどのような言葉を使ったか、なぜ別の言葉を使わなかったのか、など妄想しながら読むとさらに四季報を楽しめると思います。

 ここで語りきれなかった四季報読書のコツや四季報のそもそも話(誰が、どのようにして作っているのか)、3月16日に発売される春号の特徴などは3月15日のセミナーでお話していければと思いますので、ご興味のある方は是非お越し下さい。


■四季報セミナー第2弾開催!
 『ガチャ氏×山本潤氏 四季報の裏側、全部お話しします!その2』


■日時 2020年3月15日日曜日
 13:30〜16:45(15分程度の延長あり)
詳細、お申込はこちら ⇒ お申し込み終了しました


■主催:NPO法人イノベーターズフォーラム

※「四季報」「会社四季報」は東洋経済新報社の登録商標です。


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。また、当該情報は執筆時点での取材及び調査に基づいております。配信時点と状況が変化している可能性があります。)


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