書評:ブロックチェーン入門

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「ブロックチェーン入門」
 森川夢祐斗 箸、KKベストセラーズ
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 1990年代後半、インターネット・ITバブル華やかりしころの熱狂をご記憶の方も多いと思います。当時は「インターネット・ITと名前がつくベンチャーなら「A4の企画書1枚で数億円が1週間で集まる」などといわれましたが、実際にそのような「熱狂」の時代でした。

 当時の私は、そのようなバブルを冷ややかな目で見ていたのですが、実際2000年代に入ってすぐにITバブルは崩壊し、雨後のタケノコのように生まれていた「ナントカドットコム」というような名前のIT関連企業のほとんどは、今や見る影もありません。

 しかし、私の予想が大きく外れた部分もあります。

 スマホやECなど、「ITやインターネットがたった20年ほどの間に社会のインフラになる」などとは、正直全く予測していませんでした。

 ただ、よく考えると、卓越したテクノロジーがはじめて実用化されてから、20年〜30年ほどで社会に普及するという流れは、少なくともグーテンベルクの印刷技術の登場の頃からありました。

 ドラッカーがよく取り上げるのが、1950年代の大型商用コンピュータの時代から20〜30年経って、パソコンなどによるコンピュータの一般の時代が始まったということです。そして、それから20〜30年経って、インターネット・モバイルの時代に突入したわけです。


 ブロックチェーンも、コンピュータやインターネットに匹敵する革新技術です。

 ただし、今や投機(投資対象)として脚光を浴びているビットコインについては「ねずみ講も一番最初に参加すれば儲かる」としか言いようがありません。

 現在少なくとも600種類の仮想通貨がある現状では、どれが(いずれでもなく新たに登場する仮想通貨かもしれませんが・・・)生き残るかは定かではありません。

 バフェットが好んで取り上げる逸話は「黎明期の米国で少なくとも数百社あった自動車会社は現在3社に集約されている」というものです。自動車産業が発展するのが明らかであったとしても、その数百社の中のどれが生き残るのかはわからなかったので、自動車会社に投資したほとんどの投資家は損をしているということです。


 しかしながら、仮想通貨というものがこれまで当たり前と思われてきた「中央集権型の通貨」をひっくり返す潜在的力を持っているのは確かです。

 先進国で「中央銀行」が設立され、中央銀行が通貨をコントロールするようになったのはここ100年から200年程度のことにしかすぎません。それまでは、いわゆる分散型の通貨システムが主流だったのです(この点については「進化は万能である 人類・テクノロジー・宇宙の未来」マット・リドレーの第15章または私の書評をご参照ください。<通貨の本質>については、拙著「銀行の終焉」(あいであ・らいふ)をお読みください)。

 今後20〜30年で中央銀行が廃れて、中心が無い分散型の<仮想通貨>が主流になるといわれても、現時点では信じがたいことですが、その信じがたいことが次々と起こってきたのがこれまでの歴史です(もっとも、通貨は政府の力の源泉でもありますから、政治的に一筋縄ではいかないと思いますが…)。

 また、仮想通貨のベースとなるブロックチェーン技術のすごさは、本書を読んで改めて痛感しました。

 確かに<不動産登記>や<著作権><医療カルテ>などブロックチェーン技術は至るところに応用できます。特に、現在政府や地方自治体が関わっている煩雑な承認、証明、確認などの作業を、政府を介在せずに分散型で実現できるのは極めて重要な点です。

 インターネットも「情報の独占」に風穴を開け、チャイナなどの(共産主義)独裁国家などでは、政府の悩みの種です。

 しかし、ブロックチェーンには「政府を不要なものにする」すなわち「無政府主義」を無血で実現するだけの破壊力があります。この世で最大の既得権益者=抵抗勢力の政府が、その力をやすやすとブロックチェーンに明け渡すとは思えませんが、私の生きている間に「ブロックチェーン無血革命」が実現する可能性は否定できません・・・


 本書は、その驚嘆すべきブロックチェーンをテクノロジーというよりも<概念・思想・哲学>の面からわかりやすく解説した良書です。


(大原浩)




【大原浩の書籍】

★夕刊フジ(産経新聞社)木曜版で連載中の「最強!!バフェット流投資術」は、7月で基礎編が終了し、現在応用編を連載中です。

★「バフェット38の教え」(昇龍社、アマゾンキンドル版)が発刊されました。
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★バフェット流で読み解くGINZAX30社(2018年度版、上巻、下巻)
 <発行:昇龍社>(アマゾン・キンドル版)が発刊されました。
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★バフェット流で読み解くGINZAX30社(2017年度版、上巻、下巻)
 <発行:昇龍社>(アマゾン・キンドル版)
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★バフェット流で読み解く、GINZAX30社<特選・優良企業>
 昇龍社、アマゾン・キンドル版<上・下巻>2016年度版
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★『投資の神様』(バフェット流投資で、勝ち組投資家になる)<総合法令>
  http://goo.gl/MKtnf6

★「客家大富豪の教え」18の金言」に学ぶ、真の幸せをつかむ方法
 著者:甘粕正 <アマゾンキンドル版>
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★「賢人バフェットに学ぶ・投資と経営の成功法則」
 昇龍社(アマゾン・キンドル版)
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★「バフェットからの手紙」に学ぶ(2014)大原浩著 昇龍社<Kindle版>
 http://goo.gl/Blo6KT

★「バフェットからの手紙」に学ぶ(2013)大原浩著 昇龍社<Kindle版>
 http://goo.gl/iz1GUV


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関し
 ては御自身の責任と判断で願います。)


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書評:進化は万能である 人類・テクノロジー・宇宙の未来




「進化は万能である 人類・テクノロジー・宇宙の未来」
 マット・リドレー 箸、早川書房
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 まず、読者にとって意外かもしれないのは、ダーウィン(1809年生まれ)はニュートン(1642年生まれ:ユリウス暦)よりも150年以上も後の時代の人間であることです。

 そのため、万有引力の法則を否定する(アインシュタインの相対性理論によって修正が加えられましたが…)人はいなくても、いまだに米国のキリスト教原理主義者は進化論を否定し、学校で「地球は6000年前に創造された」と教えるよう強いプレッシャーをかけています。

 何故進化論が人々になかなか受け入れられないのか?それは(神や人間などの)「意図」や「計画」をすべて否定するからです。

 本書では、生物学的なダーウィンの進化論を「特殊進化論」、アダム・スミスに端を発する(ダーウィンも影響を受けた)社会・経済などすべての事象に関する進化論を「一般進化論」として区別します。

 例えば、一般進化論に従えば、トップダウンによる「指示」「意図」「計画」等はすべて効果が無く無意味です。有名なニューディール政策、(災害からの)復興プラン、ナントカ5か年計画など、数え切れないほどのプロジェクトは、何も効果を生み出していません。

 政府などの政策が成功したように見えるのは、「元々社会・経済・市場が政府の意図する方向に向かっているときだけ」であって、政策によって元々の流れを変えることはできません。

 社会・経済も生物の進化と同様に「適者生存」の原理に従って、「自律的に進化する」のです。したがって、トップダウンによる「意図」や「計画」は必要ありません。

 著者は、この意図や計画を必要としないアメ―バのような「一般進化論」がほとんどの社会現象で有効なことを全16章にわたって、丁寧に証明しています。

 特に注目されるのは、第15章と第16章です。

 まず、第15章は<通貨の進化>というタイトルの中で「中央銀行は不要である」という議論を展開しています。最近の日銀のていたらくを見ていると、心情的に同意する読者も多いかと思いますが、現在の日銀が抱える問題は、一時的な政策の不手際ではありません。

 過去数百年の世界の歴史の中で、中央銀行が経済を救った例は無くても、大きな打撃を与えた例は、星の数ほどあることを豊富な事例で証明しています。

 例えば18世紀に中央銀行が消滅したスコットランドにおいて、銀行の経営内容が格段に向上し、中央銀行が存続したイングランドよりも銀行倒産件数が大幅に減った事例があります。

 スコットランドにおいては「最後の貸し手」がいないことが強く意識されて、融資姿勢が常に慎重になったのに対して、「最後の貸し手が控えている」イングランドでは融資審査基準が甘くなったからです。

 また、1930年代の大恐慌による経済的打撃が最も少なかったのは、当時中央銀行が存在しなかったカナダであることも特筆すべきことです。

 さらに、リーマンショックの原因も「政府による低所得者向け住宅取得の優遇政策」にあるとしています。つまり、政府が銀行に対して「信用力の低い低所得者に融資を行うことを強制した」からだということです。もちろん、銀行がその政府の強制に従ったのは、最後はファニーメイなどの政府機関や中央銀行がしりぬぐいをしてくれるということを見込んでいたからです。

 第16章では、インターネットの発達による<政府の統制から自由な通貨>の話に議論が移ります。

 ビットコインなどの仮想通貨については、その趣旨が理解されないまま加熱しているので、これから投資するような対象ではないと思いますが、仮想通貨を支える<ブロックチェーン>の技術は、コンピュータやインターネットに匹敵する革命的技術だと思います。

 これまでの通貨は、第三者(例えば政府や銀行)による関与が無ければ価値を生みませんでした。1万円札の製造コストは20円ほどですが、20円を1万円にすることができるのは信用力のある)政府や銀行だけであったのです
(通貨の価値の本質については拙著「銀行の終焉」(あいであ・らいふ)をご参照ください)。http://amzn.to/2zc4uun

 ところが、ブロックチェーンの技術があれば、中央集権的な機関(政府・銀行)が無くても、インターネットのように階層の無いフラットなネットワークで、資金のやりとりができるということです。これが実現すれば産業革命に匹敵するようなインパクトを与えるでしょう。

 ただし、ビットコインやいわゆる仮想通貨がその主役になる可能性はあまり無いと思います。


(大原浩)




【大原浩の書籍】

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書評:日経業界地図 2018年度版




「日経業界地図 2018年度版」
 日本経済新聞社 編、日本経済新聞社
 http://amzn.to/2yTiVTH

 「新聞を読むと馬鹿になる」のはすでによく知られた事実かと思いますが、冒頭の「今さら、聞けない経済ニュース&日経テスト」から「注目業界テーマ」までは価値がある内容ではないので、<自動車・機械・造船>(27番以降)から読み進めて大丈夫です。

 最終180番までの内容は、特別なことはまったくありませんが、それなりに頑張った内容だと思います。
 このような「業界地図」の内容が劣化しているのは、編集者の問題だけではなく、ビジネス環境の急速な変化によって、「業界」という捉え方が難しくなっている影響も大きいと思います。

 例えば、IT、インターネットは今やほとんどすべての「業界」と関係し、ネット上でおむつを売るのも「葬式」を売るのも、物理的な違いはほとんどなくなってきています。


 一つ注目しているのは「自動車業界」です。完全自動運転がマスコミで騒がれていますが、飛行機(旅客機)の「完全自動運転技術」は数十年前にはほぼ完成しています。空港から空港へ飛ぶだけの旅客機の自動運転は、路地裏や歩行者のすぐ隣を走る自動車に比べてはるかに簡単なのです。
 それにもかかわらず、いまだにパイロットが必要とされる現状を考えても、マスコミの騒ぎかどれほど過剰かよくわかります。

 また、欧州(それに追従してチャイナも・・・)が、ガソリン自動車やディーゼル自動車の販売を禁止して、電気自動車を普及させようと必死ですが、この動きもうまくいかないと考えています。

 まず、二酸化炭素排出云々という「地球温暖化詐欺」の<不都合な真実>が近い将来明らかになるでしょう。そもそも地球の気温の大部分が「太陽黒点の活動」と「地軸の傾き=日射量が大きく変わる」に左右され、人間が排出する二酸化炭素の影響など微々たるものにすぎません。「牛のゲップの二酸化炭素の方が影響が大きい」といわれるゆえんです。

 また、電気は決して地球温暖化論者が唱えるようなクリーンなエネルギーではありません。その大部分は化石燃料で発電されますし、いわゆる<再生可能エネルギー>に至っては、地球環境破壊の元凶です。
 地面を埋め尽くしたソーラーパネルやグロテスクで巨大な風車を見たことがある方なら、すぐに理解できると思いますが、そのような設備は動物たちや植物たちの守ってきた自然環境を確実に破壊します。もし、すべての電力を再生可能エネルギーにすれば、信じられないほどひどい範囲の環境が破壊されますし、不安定な電力供給で毎日のように停電します。


 ただ、欧州やチャイナの戦略は、実のところ<トヨタつぶし>、<日本メーカー対策>の要素が大きいのです。

 ガソリン自動車で彼らが日本勢に対抗できないのは明らかですが、ハイブリッドではトヨタが一人勝ちです。
 電気自動車ばかりが騒がれていた時代に、<ハイブリッド>につき進んだトヨタの判断は素晴らしいものですが、それも「現地・現物」というトヨタシステムのおかげです。

 今回の<電気自動車>騒ぎに対してトヨタは静観を決め込んでいますが、<地球温暖化詐欺>の真実を知っているというだけではなく、<次世代自動車の柱は「水素」>だと確信しているからです。


 確かに、水素自動車普及のための<水素ステーション>の建設は、まだこれからですが、それでも、電気自動車の充電のわずらわしさに比べれば、今後十分競争していけるとの判断なのです。

 ガソリン自動車の前から実用化(ポルシェなどのメーカーは創業当時電気自動車をつくっていた)されているにも関わらず、いまだに自動車の本命になれないのは、やはり「電池」がネックになっており、これを解決するブレーク・スルーは今のところ登場していません。

 それに対して<水素>は宇宙で初めて誕生した物質であり、宇宙に広く分布するだけではなく、地球上にほぼ無限(例えば海)に存在します。もちろん、実際に燃料としてどのくらいのコストで生産できるかという問題はありますが、実用水準に近づきつつあるのは事実です。
 また、トヨタが保有するFCV特許の多くを公開し、FCVそのものを普及させる戦略も有効だと考えています。

 2016年のFCV「ミライ」の販売台数は2046台、ガソリン自動車に比べれば微々たるものですが、かなり健闘しているのではないでしょうか?

 また、エネファーム(燃料電池)の累積販売台数は、2020年に140万台になる見込みです。都市ガス(水素)をそのまま、FCVに利用できるようになるかどうかは定かではありませんが、水素活用の進展は追い風です。

 水素自動車でもハイブリッド同様トヨタ自動車の一人勝ちになるかもしれません。


(大原浩)


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書評:ファスト&スローあなたの意志はどのように決まるのか?(下)



「ファスト&スローあなたの意志はどのように決まるのか?(下)」
ダニエル・カーネマン箸、早川書房
 http://amzn.to/2xtiUrW

 ※上巻の書評はこちら http://www.okuchika.net/?eid=7275


 下巻においてもカーネマンの鋭い洞察と、非常にわかりやすい解説に変化はありません。

 上巻は、システム1とシステム2による人間の脳活動の分析が中心でしたが、下巻は「フレーミング」、「利用可能性バイアス」など、人間の判断の誤りを誘発する原因や、「自信過剰」「メンタルアカウンティング」などの問題に鋭く切り込みます。


 最近、新聞やテレビの世論調査の結果が各媒体によって大幅に違うことが話題となりました。統計学的なサンプル抽出の問題(絶対的なサンプル数が足りないとか、ある新聞の読者が偏向している)も理由の一つですが、「フレーミング」の問題もかなり大きいと言えるでしょう。

 例えば全部で600人が死の危機に瀕しているとき、「200人が助かる」選択をすることは簡単ですが「400人が死ぬ選択」には心理的な抵抗があるはずです。結果的には同じなのですが・・・

 このようなフレーミングを使って世論を誘導するのはマスコミの常とう手段です。しかし、フレーミングを悪用するのは決してマスコミだけではありませんので、我々はこの問題にかなり注意しなければなりません。


 また、カーネマン自身がどの程度投資に関わっているのかは(自身の資産も含めて)不明ですが、投資に関する洞察の深さには恐れ入ります。

 共同研究者のエイモス・トヴェルスキーがある投資アドバイザーに自分の資産の評価を頼んだ時のことです。その投資アドバイザーは、それぞれの資産の購入価格を教えてくれるよう依頼したのですが、エイモスはそのようなものを何に使うのかわからず大変驚きました(ちなみにカーネマンも)!するとそのエイモスの反応を見た投資アドバイザーもびっくりしました。

 少なくとも、理論的に考える限り、過去の購入価格は資産を将来どのように運用するのかを考えるときには全く関係ありません。

 例えば、トヨタ自動車の株が現在7000円とします。9000円で買って2000円損していても、4000円で買って3000円儲かっていても、これからすべきことは同じです。

 もし、その時点で損をしているのか得をしているのかが、将来の判断に影響したとすれば、その判断は<明らかな間違い>です。

 その時点での損得に目くらましをされるがゆえに、多くの投資家は投資に成功できないのです。私自身も、その本能から完全に逃れることはできませんが「いくらで買ったか」などということはできる限り早く忘れるよう心がけています。大事なのは「これからどうするのか」という判断だけなのです。


 さらに、<大きな利益が予想されるときよりも、大きな損失が予想されるときの方が、人間は大胆なギャンブルを行う>というのも非常に興味深い話です。
 例えば、ある株式の投資で1000万円の損失が生じているときに、

1)1000万円の損失を確定する(損きりをする)
2)10%の確率で損失がゼロになるが、90%の確率で損失が1112万円になる。

としたらどうでしょうか?

 この設問は私が考えたものなので実験をしてみないと確かなことはわかりませんが、カーネマンの研究や私の観察によれば、2番の更なるリスクをとる方が多いのではないでしょうか?

 実際のマーケットでは、将来の株価が予想できませんから、2)を選択したつもりでも、実際にはもっと大きなリスクを背負うことになり「討ち死に」する投資家が後を絶たないというわけです(損失を確定すれば将来の株価がどうなっても損失が膨らむことは無い)。


(大原浩)




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書評:ファスト&スローあなたの意志はどのように決まるのか?



「ファスト&スローあなたの意志はどのように決まるのか?(上)」
ダニエル・カーネマン箸、早川書房
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 心理学者でありながらノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが、一般向けに行動経済学の基礎を解説した非常に読みやすい本です。
 表題の通り「システム1=ファスト=直感」と「システム2=スロー=思考」が中心となって展開します。

 どの章も非常に興味深いのですが、今回は特に第20章<妥当性の錯覚>を取り上げます。

 この中で、ウォーレン・バフェットが常に主張している「株式の売買は少ないほどいい」と「投資信託を買うのであれば手数料の安いインデックスファンドしか考えられない(人間が運用する投資信託は買うべきではない)」について、素晴らしい「科学的証明」が行われています。

 カリフォルニア大学バークレー校金融工学教授のテリー・オディーンが某証券会社顧客1万人(取引数は16万3000件、その多くが男性)について行った調査によれば、投資家がA株を売ってB株を買った場合、平均で(売った)A株の方が3.2ポイント年平均でより高く上昇していました(手数料は別)。要するにあれこれ考えて売買せずに、最初の株をそのままっ持っていた方が良い結果であったということです。

 また、彼と同僚のブラッド・バ―バーとテリー・オディーンとの共同研究では、「平均的には、最も活発な投資家(売買回数が多い)が最も損をし、取引回数の少ない投資家ほど儲けが大きい」ことが確かめられていいます。
 バフェットの主張通り、売買すればするほど損をすることが明らかになりました。

 また、男性は「無益な考え」に取りつかれる回数が多く、その結果、女性の投資実績は男性を上回ることも示しています。これも私の観察結果に一致します。

 さらに、50年間にわたる調査によれば、投資マネージャーの運用成績はサイコロ投げにも劣ります。少なくとも投信(ファンド)の3件に2件は、市場全体のパフォーマンスを下回っていました。
 サルに任せるか、コイン投げで運用した方がましということです。
 あるいはバフェットが主張するように手数料が安いインデックスファンドを購入すべきでしょう。


 最後に、ダニエル・カーネマン(2002年に「プロスペクト理論」によってノーベル経済学賞を受賞)の某金融機関運用マネージャー25名8年間の運用成績を研究した結果、「28個の相関係数(1年目と2年目、1年目と3年目・・・7年目と8年目まで28組のペアをつくり相関係数を求めた)は、0.01であった」という研究結果が紹介されています。

 つまり、これらの運用成績に相関関係は無い=担当者のスキルによる運用成績への影響はゼロという結果になったのです。

 カーネマンは、情報提供先の金融機関にこの研究成果を報告しましたが……その結果はご想像の通りです・・・

 まあ、キリスト教の牧師に「研究の結果神は存在しないことがわかりました」というのと同じで、自分のおまんまの食い上げ(特にファンドマネージャーは高給)になるような意見は無視するか、それとも魔女裁判のような形でたたきつぶすしかないのでしょうね・・・


(大原浩)




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ドラッカー18の教え 第7回



産業新潮 http://homepage2.nifty.com/sancho/
10月号連載記事


■好きなことをするというのは、必ずしも楽をすることではない


 「好きなこと」をすれば、やる気・意欲が高まるから仕事の効率が上がり、良い結果が出せる。その通りです。ただ、「好きなこと」の定義はなかなか難しいと言えます。

 例えば学校のクラブ活動を例に挙げてみましょう。
 「雑談部」というクラブがあるとします。放課後部室に集まって、若い男女が色々な話をするのは楽しいでしょうし、多くの人にとって「好きなこと」の一つには違いないかもしれません。

 しかし、現実にはそのようなクラブを(少なくとも私は)見かけたことはありません(事実上そうなっているクラブは時折見かけますが・・・)。
 なぜ、「雑談部」が存在しないのか?親や学校の先生の受けが良くないのはもちろんのこと、同級生からも馬鹿にされるというのが原因の一つでしょう。
 それだけではありません。「雑談部」のように、明確な目標が無く達成感を得られない活動は、実のところそれほど楽しくないからなのです。

 例えば、野球部やテニス部。球ひろいや雑用はともかく、練習は厳しく、実際に試合をする時間は、全体のごく一部です。それでも、多くの若者が「雑談部」で楽しいおしゃべりに興じることではなく、野球部やテニス部などで、苦しく厳しい練習に耐えることを選びます。彼らに「野球部やテニス部の活動は『好きなこと』か?」と問えば、ほとんどの場合「イエス」という答えが返ってくるでしょう。


●「やりたいこと」ではなく「やるべきこと」を選ぶ


 ドラッカーは「強みを生かせ!」ということを強調します。強みと自分がやりたいこと=「好きなこと」は必ずしも一致しませんし、ドラッカーは具体的なケースでそれを説明しています。そして、強み=「自分が行うべきこと」とやりたいこと=「好きなこと」が食い違うときには、必ず前者を選ばなければないと述べます。

 やりたいこと=「好きなこと」をあきらめて、強み=「自分が行うべきこと」を行うのであれば、「仕事を楽しむ」どころでは無いと考える読者の方も多いかもしれません。

 確かに、二者択一で自分の好きではないことを選んだということだけを考えれば、「楽しくない」ということができるかもしれません。しかし、この二者択一を迫られた人物は、なぜそのような判断をするのでしょうか?そこに問題の本質を解くカギがあります。


●高い目標が無ければ仕事を楽しめない


 ドラッカーは
「失敗したことが無い人間に重要な仕事を任せてはならない。なぜなら、失敗したことが無い人間は『挑戦したことが無い』からだ」
と述べます。

(続く)


続きは、産業新潮
http://homepage2.nifty.com/sancho/
10月号をご参照ください。


(大原浩)


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ドラッカー18の教え 第6回



産業新潮 http://homepage2.nifty.com/sancho/
9月号連載記事


■知識社会では生涯学習が不可欠である


●知識こそ現代の「産業のコメ」である


 戦後の復興期から高度成長時代には、「鉄は産業のコメである」などといわれていました。その時代の産業にとって必要不可欠であった「鉄」を日本人の食生活において必要不可欠な「コメ」に例えたわけです。
 コメの消費量は当時から比べて減ってしまいましたが、それでも日本人の食生活に必要不可欠であることに変わりはありません。

 現代において「産業のコメ」とはいったい何でしょうか?
 それは「知識」に他なりません。


 ドラッカーは、現代社会(先進国)においては、知識こそが経済の中心であり、過去の遺物となってしまった(あるいはもともと幻想であった)、「土地・労働力・資本」(生産の三要素)という概念にとって代わるものであると述べています。


●知識と情報は違う

 知識と情報はいったいどこが違うのでしょうか?

 情報はデータと呼ぶこともできますが、情報そのものに「判断」の要素はありません。情報やデータはあくまで事実の羅列で、その事実の羅列を「解釈し判断するためのもの」が知識です。

 グーテンベルグ以来、「印刷技術」によって一部の特権階級に独占されていた(写本は現在の感覚で言えば一冊数百万円〜数千万円くらいはする高価なものでした)情報が広く行き渡るようになりました。そして、現代の「インターネット革命」によって、情報はほぼ無料で誰にでもアクセスできるものとなったわけです。
 情報は拡散すればするほどその価値を失います。例えば、インターネットで全世界に公開されている情報をわざわざお金を払って取得しようという人間はいないでしょう。


 しかし、事実の羅列である情報そのものに価値は無くても、そのバラバラな情報を「解釈し判断」するための体系化された知識があれば話は別です。

 現代のビジネスにおいては、物を運んだり、ねじを回したり、書類を記入したり、数字を計算したりするような「作業」はどんどん機械化・自動化されつつあります。逆に、どの部門に投資するのか、どのような人材を採用するのか、どのような広告キャンペーンを行うのか、どのような店舗戦略を採用するのかというような「判断」が「利益=富」の源泉であり、そのために必要不可欠なのが(体系的な)知識であるのです。


 江戸時代には米俵二つを一度に担ぐことができる力持ちが重宝され高い給料をもらいましたが、現代においては、各企業が利益の源泉である「知識を持った労働者」の獲得に血眼になっているのです。


●知識労働者は雇われない

 産業革命以降、多くの労働者が資本家に従属したのは、工業化社会においては、巨大かつ高価な製造機械を購入できるのは資本家だけであり、一般の労働者はその機械を保有する資本家の下で働く以外の選択肢が無かったからです。

(続く)


続きは、産業新潮
http://homepage2.nifty.com/sancho/
9月号をご参照ください。


(大原浩)


★夕刊フジで好評連載中の「最強!バフェット流投資術」<基礎編>は7月13日(木)で終了しました。7月20日(木)からは「最強!バフェット流投資術」<応用編>として、個別・具体的な日本企業をバフェット流で解説しています。(毎週木曜日連載)


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ドラッカー18の教え 第5回

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産業新潮 http://homepage2.nifty.com/sancho/
8月号連載記事


■お金しかなければ成功しない。


●金儲けは尊い行為である


 金儲けが卑しいという思想はいったいいつどこで始まったのかは定かではありませんが、宗教がその思想を強固なものにしたのは間違いがありません。

 日本のある行者は生涯お金に触れずに暮らしました(実際のところは弟子が必要な品物の代金の支払いを行ったのですが・・・)し、ジーザス・クライスト(イエス・キリスト)はユダヤ教の神殿で(念のため、ジーザス(キリスト)はユダヤ教徒です)静かに商いを行っている商人に乱暴・狼藉を働きローマ軍に捕らえられた挙句、結果として磔にされました。

 また金儲けの究極の形ともいえる金融(金貸し)業は、キリスト教において長らく汚れた行為とされ、「金融業に携わる者は天国に行けない」と牧師が説教しました。そのため、欧州での金融業において、そのような縛りが無いユダヤ教徒が力を持つようになり、現在でもグローバルな金融業でユダヤ系が一大勢力となる素地を作りました(実際には、テンプル騎士団などは現在でいうトラベラーズチェックや為替など金融業で大儲けしました。もっともテンプル騎士団は、多額の貸し付けを行ったフランス王にそれゆえに弾圧され−テンプル騎士団が隠し持った財宝が狙いであったともいわれます−悲惨な最後を遂げました)。

 現在も金儲け(利益)に対するタブー意識のようなものが宗教界を中心に存在しますが、「坊主丸儲け」という言葉に代表されるように宗教そのものが驚くべき高収益ビジネスです。何しろほとんど原価ゼロの戒名(ルターが糾弾した免罪符と同じようなもの)が数百万円で売れるわけですし、京都などの有名寺院の財力も驚くべきもので祇園の花街の上得意です。

 さらには、信者に対して「富を持つと人間は不幸になるから財産は全て寄付しなさい」と促します。そして「財産を持つ不幸は我々が背負いましょう」とまで親切に言ってくれます。

 たしかに、富を求めなければ心穏やかに暮らせますが、それは「ホームレスの生活が結構楽しい」と言っているのと代わり映えしないように思えます。
 より高いものを求めるからこそ、もがき苦しみ、その苦しみを克服することにこそ人生の目的があるのではないでしょうか?


●金の亡者は成功しない

 もっとも、ビジネスで成功するためには、「金の亡者」のようにふるまうべきではありません。「お金」のことしか頭にないような人間(例えば民主党の大統領経験者夫妻)は徹底的に軽蔑されますし、「他人の金儲けを手伝いたい」などという奇妙な人間は、めったにいません。


続きは、産業新潮
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8月号をご参照ください。


(大原浩)


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ドラッカー18の教え 第4回

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産業新潮 http://homepage2.nifty.com/sancho/
7月号連載記事


■すでに起こった未来を探す。未来を予想することはできない。


 人間とはいったいどのような存在なのか?と問われたとすれば、答えは無限に等しくあるでしょう。

 私が一番気に入っている答えは「人間は神とサルの間に存在する」というものです。つまり、「ある時は神様のように崇高であり、逆に、あるときにはサルのように本能に従って行動するのが人間である」ということです。ただし、人間はサルでも神様でもありません。そこにははっきりとした線引きがあります。


 例えば、神様にできて人間にできないことの一つに「未来を予想する」ことがあります。神様には未来がお見通しであっても、人間にとっての未来は、まさに深い霧の中に存在するのが現実です。

 年末、年始になると新聞や雑誌で「景気・為替・株価見通し」の特集が組まれ専門家や著名人の予想が華々しく掲載されますが、このようなものは、パチンコの出玉情報や競馬の勝ち馬情報以上の意味はありません。翌年の特集で、前年の予想の成果の検証が行われないこと自体が信頼性の無さの証明です。


 バフェットは「私は未来を予想することができない。また、もし『未来を予想することができる』と主張する人間がいるのなら是非お目にかかりたいものだ」と、色々な場で発言しています。
 いまだにバフェットの目の前に「私は未来が予想できる」と主張し、その証明を行う人間が現れないところを見ると、やはり「未来を予想できる人間など存在しない」と考えた方がよさそうです。

 「投資の神様」と呼ばれるバフェットが、未来を予想しないで、どのようにして投資で大成功を収めたのか不思議に思われる方が多いかもしれません。実は、投資で成功するために、未来を予想することなど全く必要ないのです(投資を行うのに「予想が必要である」という社会通念は全くの間違いです)。

 バフェット自身の言葉を借りれば「未来の予想はできないが、いつかやってくるであろう危機に備えることはできる」ということなのです。


 日本は地震国で、いつか再び大きな地震がやってくることはほぼ間違い無いでしょう。しかし、何年・何月・何日にどこに地震がやってくるという予想はまず当たったことがありませんし、「当たった」と騒いでいるケースは極端な拡大解釈か偶然の一致にしかすぎません。

 しかしながら、建築物のしっかりとした耐震基準を定めたり、定期的に避難訓練・防災訓練を行ったりすることによって、被害をより小さくすることは可能ですし、場合によっては人的被害をゼロにすることも可能でしょう。


続きは、産業新潮
http://homepage2.nifty.com/sancho/
7月号をご参照ください。


(大原浩)


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ドラッカー18の教え 第3回

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産業新潮 http://homepage2.nifty.com/sancho/
6月号連載記事


■マネジメントに関わる者は実践者でなければならない


●マネジメントもビジネスも投資も科学ではない。実践である


 前回「経済学は科学ではない」というお話をしましたが、同じ意味で「マネジメントもビジネスも投資も科学では無い」ということができます。そしてその心は「経済学・ビジネス・投資・マネジメントのいずれも『人間』に関わること」という点にあります。

 日本語の慣用句に「猫の手も借りたい」という言い回しがありますが、人間の手だけを切り取って雇うことはできません(余談ですが、私は「手料理」という言葉を聞くと「手のから揚げ」とか「手の角煮」といった料理を連想してしまいます・・・ちょっとグロテスクな話ですが、豚足などがそのイメージに近いでしょうか・・・)。

 例えば、誰かを雇えば、好むと好まざるにかかわらず、「手」の他に一人の人間の体全体が必ずついてきます。そして、人間の「心・精神」も肉体と不可分です。ですから、マネージャーはこの厄介な人間の「精神・心」を上手にマネジメントしなければなりません。

 あるいは投資の世界において、たとえコンピュータシステムで取引を行う場合であっても、そのコンピュータ取引を行うべきか否かを判断するのは結局人間です。少なくとも現在のコンピュータは、自ら「金持ちになりたい」などという理由で資産運用を始めたりはしません。アーサー・C・クラーク(映画はスタンリー・キューブリック監督)の「2001年宇宙の旅」のHAL(今でいうAIコンピュータが高度に進化したもの)なら別かもしれませんが・・・。

 つまり人間だけが「動機」を持ち、その「「動機」をどのようにコントロールするのかがマネジメントの核心」なのです。「動機」という言葉はミステリー・ドラマなどでよく使われますが、普通の人々が動機が無ければ殺人など犯さないのと同じように、組織(企業)に属する人々も動機が無ければ仕事などしません。したがって、マネジメントを行う人々(マネージャー)は、個々の人間の「動機」に多くの関心を割くべきであり、その動機を解明(理解)するためにも(現場で)実践し、個々の人間と密なコミュニケーションをとらなければなりません。

 そして、その解明した動機を基に個々のメンバーの「動機付け」を行い、より業務の水準を高めるのも、マネージャーが行わなければならない重要な実践です。

 方程式や立派な理論を基にしたマニュアルでマネジメントができればとても楽なのですが、残念ながら「人間という複雑怪奇な存在」を相手にしている以上、マネジメントはあくまで実践であり、刑事ドラマの名セリフ「事件は現場で起こっている!」も、ぴったりとビジネス・投資・マネジメントに当てはまるのです。


続きは、産業新潮
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(大原浩)


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