JUGEMテーマ:株・投資
■今週のキーワード"Bull markets are born on pessimism, grow on skepticism, mature on optimism, and die on euphoria." By Sir John Templeton Founder Templeton Funds, philanthropist)
現在のマーケットがどのフェーズにあるか読者の判断に任せたい。個々の市場、担当セクターによって随分温度差があると思う。街角で耳にする話題の多くは明るい話題「衣、食、住、趣味・娯楽」に関するものが増えてきた。客単価2万円を超えるレストランは平日でも満席になる日が増えつつあると聞く。強気派の筆者ですら短期的に株価調整が必要だと思うが、3年程度の中期的な視点で見て日本にも約20年ぶりにWealth Effectが生まれつつあること、混乱期を脱したことを実感できるようになりつつある。学習効果により80年代半ばのようなバブルの発生が起こる可能性が低いことを考えると、今週あたり調整局面か。しかし過度の心配は不要だと思う。調整のキッカケは、銀行の公的資金返済スキーム(本来9月中と聞いていたが)が予想以上のプレミアムを政府が要求する場合、米景況感の予想以上の悪化、値ごろ感からの利食い?
★Market Navigator:Courage under fire!ロンドンでの同時多発テロ発生、不思議なことにマーケットもこの種の事件では動じなくなりつつある。Chicago Board Options Exchange volatility index(VIX index) を見ると明らかだ。6月22日に11.05%(52週最低水準)をつけ、ロンドンでのテロ事件で7日木曜日に13%台をつけたが8日引けでは11.45%まで下落。過去の参考データ:9.11事件、01年9月11日の後、取引再開になった時31%まで上昇。寧ろ、米雇用統計の堅調ぶりと賃金の伸び率に着目するほどの余裕。米失業率は、2001年9月以来の低水準。時間あたり賃金も前月比+0.2%増、16.06ドルまで上昇(微増)に安堵する声も。米長期金利も4.10%(前週4.05%)で安定。持続的な景気成長、なだらかなFFレートの上昇、問題は、企業業績の伸びが何処まで鈍化するかが大きな焦点となる。当面前年比+7%成長という水準が一つの節目か。対ドルばかりでなく対ユーロでも若干円安。ドル:112.20、ユーロ:134.30。「テロとの闘い」は続く。
★―平成維新−「混乱期」から「安定期」へPart 1
アジア危機(97年以降の日本の金融淘汰)ITバブルの崩壊により、長年に渡り形成されてきた経済的勝者の方程式が大きく変化。例えば、金融の世界では、興長銀を頂点として、大手都銀(都銀13行あった)地方銀行と続き、借り手側は、規模に合った金融機関と取引、企業経営に関しても金融機関からのOBが細かいことに口出しした。借り手、貸し手、就職する学生を含め暗黙の序列があった。しかし、時代は大きく変化、メガバンクの支店長自ら中小企業を訪問し、融資案件を持ち込み、貸出基準も有形・無形の資産とCashフローなど独自の貸出リスクを算定するようになった。銀行で働く人の意識も大きく変化、常に転職の機会を考えながら日々を過ごすことが多いと聞く。運用会社の世界も大きく変化(略)。
しかし、日本の戦国時代と同様、混乱期には一兵卒から足軽大将、一国一城の殿になれるチャンスがあるが、大きな合戦が減るにつれ、一攫千金のチャンスは大きく減る。逆に混乱期に成り上がった城主は、自らの安泰と子孫繁栄を願い、年貢の取立て、武装解除、築城に励み、新興勢力の台頭を阻むようになる。90年代後半に、落ちぶれる「大名」から離れ、自ら新興勢力を起こした成功した企業(個人)の安定期がこの2−3年続くことになりそうだ。既存の富裕層に加え、新富裕層と熟年層が消費と投資をリードする。一方、混乱期にリスクを取らなかった人はどうなるか、これについては次回報告したい。
★Market Navigation:‐下振れ感のある米Vs.景気再加速化するアジア
/ Money inflow into Asia
米:NRA(全米小売協会、National Retail Association)から2005年クリスマス商戦の第一次予想数値:+5.0%(対前年比)2004年の+6.7% (最終集計値)をやや下回る。2つのかく乱要因、燃料費の高騰とハリケーンによる被害が消費モメンタムを引き下げると判断している。Chapter11(倒産)手続きの見直し(安易にCh11を企業、個人−経営者が利用することから)制度見直しが検討されており駆け込み倒産も。
斑模様の欧州:EUの消費者信頼感指数(9月)は8月の97.8に対し98.6(予想平均が97.4)CPIは3.7%、事前予想の3.5%、前月の3.3%を大きく上回った。一方、地域別では英国GDP(2Q )が下振れ、1.5% (事前予想1.8%、1Qの2.1%に比べ減速感強まる。9月の住宅価格(平均)は前月比−0.2%、前年比+1.8%(8月は+2.3%)資産インフレ沈静化。ドイツも8月の小売は天候不順の影響もあり前月比−0.8%(事前予想の+0.4%)を下回る。フランスの2QGDPは前年比+1.3%(事前予想通り、1Q:1.9%)。
アジア:インドの4−6月GDP:+8.1%(事前予想7.2%、9月30日発表)中国の経済先行指標となるM2は+17.3%(事前予想+16.2%、9月13日発表)固定資産投資(8月)+27.4%(7月:+27.2)10月10−14日に出てくる9月のM2、10月25日の3QGDP(2Q:+9.5%)そして日本の7−9月の短観(大企業製造業予+22、同非製造業予+17)。主要アジア地域は景気の上振れ基調にある。
米国資金の海外シフト(8月データ):米ICI, Investment Company Instituteの発表した8月の数字を見ると, http://www.ici.org/home 米投信への資金流入額は$61.1億ドル(7月の95.5億ドル)に比べ減少したが、海外向け投資ファンドへの資金流入額は、$82.2億ドル(7月は$46.4億ドルに対し対前月比+77%増)一方、米国向(国内向けファンド)は$19.2億ドルの純流出(7月は$53.2億ドル)
★1.Technology Insight-悲観の中にも明るさ広がる、継続性とDurationには疑問符残る
マイクロン(MU)の6−8月決算、DRAMのビット数量出荷+30%(前期比)単価も前期比+3%増、厳しかったCMOSセンサーも前期比+40%。在庫も78日分から72日分まで減少しているが、PCの出荷が7−9月期前年比2桁増(15−20%)デジタルカメラの高画質化、好調だったBack-to-school sale、これまで先端分野への投資タイミングを戦略的に先送りして量産化に力を入れてきたことを考えると業績上振れそのものに対して驚きはないがその巧みな技には敬服。今回、同社は新しい2006年度の設備投資を10−15億ドルと発表。中期的なOvercapacity問題が解決されたわけではないが、先週報告した通り、「量産化技術」について何をしたのか注目しておくべきだと思う。同社の量産化技術には、東京精密(7729)の技術(ウエハープローバー、CMPなどの前工程でのYield上昇)が深く関わっていると筆者は思う。
ハイテク株をどうみるか−反騰局面続くが水準訂正、Valuationの調整(PERの低下、Earnings visibilityの低さからアナリストは慎重)、足元の主力ハイテク製品の販売数量増、季節的な需要期、新型ゲーム機の投入、デジタル家電製品のボリュームゾーンの伸びにより10−12月期は、反騰局面の到来だが、欧米景気指標、ニュースフローにより投資家の目は、内需、アジア域内向け輸出から大きく離れないと見る。日本の半導体メーカーは先端分野への投資時期が早かったため、投資負担重く、マイクロンのような増額修正は期待薄だが、エルピーダ(6665)やNECエレ(6723)などコモディティ系、システムLSI(ドライバーICが7−9月に前期比−19%引き下げと報じられても株価へのインパクトは
限定的だった。悪抜け。
HDDはDinosaur(恐竜)ではない:筆者はこの春、HDD(Hard Disc Drive)市場及び銘柄に対し警鐘(アップルiPodへの期待感と携帯電話など多岐の分野にわたりHDDが利用されるという過剰期待感が強かったため)を鳴らしたが、株価としてはここから反騰が期待できると見ている。理由は、水準訂正、アップサイドは、出荷数量の対前年比が鈍化傾向に入り成長セグメントとは言いがたいが、10GBくらいまではNANDフラッシュが優位となることがここに来てコンセンサスになり過度の期待が剥がれた。
HDDに対し厳しい見方をする米市場−これは水準訂正が入ってもおかしくないのではないか。11月1日に決算が出てくるHDDのヘッドのところに付くサスペンションメーカー、Hutchinson Technology (HTCH)世界シェア約50%超、PER:15倍、1インチHDDのSeagate Technology (STX): PER:7.9倍、Western Digital (WDC):PER: 10倍、品質問題を起こしたとされるMaxtor (MXO):PER:97倍を除けば、株価動向、Valuationもかなり売られすぎ、日本のHDD関係の銘柄を見ると:HTCHの競合、日本発条(5991)Y832、時価総額:2,030億円、PER:16倍、決算は11月18日、HDDのヘッドを支えるピボット、世界シェア70%、1インチ以下では、ほぼ100%を占めるミネベア(6479)Y468、時価総額:1,868、PER:24倍
は既に目先の悪材料を織り込んだ可能性がある。HOYA(7741)と日本電産(6594)は調整後、既に切り返し基調にある。次世代垂直磁気記録方式を発表している富士電機(6504)Y452、時価総額:3,374億円、PER:20倍。HDDの部材の約70%超は日本メーカーが供給。
成長性分野はWireless通信(IP)・ネットワーク(UWB, Ultra Wide Band):最近米国で話題になっている会社は、F5 Networks Inc (FFIV) Mcap:$1,672mil.PER:33X, software solution for controlling and optimizing Internet traffic and content, IPO候補では、Barracuda Networks, ConSentry Networks, E-BayがSkype(ベルギーの会社、2002年設立、PCを使って世界中どこでも無料で電話がかけられるIP電話ソフトの会社)を26億ドルで9月12日に買収、既にその事業価値は$28億ドルになったと評価するアナリストまで登場。
UWB半導体(チップセット)既に日立電線(5812)Y461,時価総額:Y1,724億円、PER:32倍のフィルムアンテナが実用段階にきている。UWB搭載PC、同製品対応Network機器など今年のCEATEC(10月4−8日幕張メッセかセミコン・ジャパン(12月7日−9日幕張メッセ)で異なった信号波長を多重化して通信するルーターの開発、光信号を高速処理する半導体研究、100Gbps−Ethernet実現に向けた話題が披露されそうだ。「悲観の中で次のハイテク相場が生まれる日」もそう遠くないのかも知れない。
★2. Consumer & service-息の長い消費回復、Wealth Effectこれまで財布の紐を硬く締めてきた富裕層の投資と消費に回復基調に入っているが、80年代のバブルの頃の日本の富裕層と今とでは中身が大きく違う。教育水準が高く、昔の成金タイプは少ない、海外留学、旅行慣れしており物を見る目が肥えている、さりげないファッション(10万近くもするジーンズにX万もするTシャツ、フランクミューラーの時計?)多少の見識がないと分からない。混乱期にリスクを取り見事にリターンを勝ち得た「新富裕層」は、もっとリターン・リスク管理にシビアである。
潜在的消費拡大層−最近、筆者は昔同じ会社で働いたことのあるAさんに街中でばったり出会った。90年代半ばにJob security blanket(日本の会社)を飛び出し外資系に転職、何度となく修羅場を乗り越え、現在は、あまり目立たない某外資系の幹部として活躍。話の内容から「税引き後の年収がなんとX億円」。当の本人は「年収10億、100億の人が出てきている」と「新富裕層」としての実感、自覚があまりない。東京タワーが見えるあるマンションのペントハウスに賃貸で住み、今の景気回復や資産価格の反騰にそれほどの信頼を寄せていないようだが、内心気になるようだ。現役の市場関係者も多忙でお金をじっくり使う時間がないという人が意外に多いのではないかと思う。
消費回復層:一時は倒産が囁かれていた、30社、50社リストにも載ったことのある企業に勤めている人や長年構造不況業種と呼ばれてきた業種、企業に勤務する人は、最近総じて元気がいいと聞く。本業の回復、夏・冬のボーナスが急速に回復基調にあり、残業代がでるようになったことに加え、紙屑同然だった株価の上昇で車を買い替えるか、もう少し広いところに引っ越すか検討中の人も多い。少し良くなると、ちょっとばかり贅沢がしたくなる貴重な存在。最近住宅を買った人は、必ず約1年後には家具を買う。
消費・投資リード役:団塊世代よりもちょっと先を行く世代(終戦前後に生まれた世代)人口が少なく手厚い年金と退職金を貰える世代。最近相次いで現役を退き、数千万円の退職金を入手。毎月分配金投資信託、高配当ファンドにお金を一部入れ月次の小遣いは「ちゃつかり」こちらで稼ぐ。年に2から3回海外旅行、夫婦でDayトレードを楽しむ他、しゃれたカフェの常連、百貨店のイベント「北海道展、イタリア展など美味しいものには目がない」積極参加、サークル活動にも積極的で、百名山、世界遺産トップ20−30訪問計画、ロングステイ、クルーズセミナーなど「人生を楽しむ」イベントにも積極的。年金も60歳から支給、小遣い稼ぎの仕事と孫と遊ぶのが楽しみだが、年金支給額が減額される前に楽しんでおきたいと意欲的。この世代後に、団塊の世代(1947−49年)が参入してくる。早くも「シニアハナコ」「サライ族」などいろんな呼び方があるが、最近の株価上昇で持ち株会の含み損が急速に萎んでいき「夢が膨らむ」という声も。(Source:何れも電車の中で漏れ聞こえてきた話をメモにしたものより)。
20年ぶり?労働市場逼迫感―新卒採用充足率が予定を下回る。就職情報サービス会社毎日コミュニケーションズの調査によると、来年入社予定の新卒採用状況が苦戦。採用充足率(内定者/募集人員)が86.9%、昨年より4ポイント低下。アルバイト雑誌を見ても首都圏の時給は、1,000円前後。
★銘柄:株価上昇基調にある。リゾートトラスト(46819)Y3,170時価総額:1,200億円、PER:25倍、東急不動産(8815)Y733、時価総額:3,400億円、PER:19倍(来期EPS40円潜在株調整後)2社ともファイナンス。キャパを増やさないとこの3年くらいの成長が期待できない。小型株ではユーラシア旅行社(9376)20.7万円、時価総額:75億円、PER:34倍、ノエビア(4916)Y1,396、時価総額:498億円、PER:19倍、リンク・セオリーHD(3373)Y65万円、時価総額:948億円、PER:33倍、百貨店、三越(2779)高島屋(8233)伊勢丹(8238)などご存知銘柄。
(菊川 半蔵)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)